
監督:ポール・ハンター
共同製作:ジョン・ウー
音楽:エリック・セラ
出演:チョウ・ユンファ(チベット僧)
ショーン・ウィリアム・スコット(カー)
ジェイミー・キング(ジェイド)
カレル・ローデン(ストラッカー)
ヴィクトリア・スマーフィット(ニーナ)
マコ(ミスター・コジマ)
ロジャー・ユアン(宗師)
マーカス・ジーン・ピレー(ファンタスティック)
ハリウッド進出以後、ジャッキーやジェット・リーのようなカンフー系の人達と違って、いまいちパッとしないチョウ・ユンファですが、ついにカンフーの要素のある映画に手を出してきました。
全体的な映画の雰囲気は『ロミオ・マスト・ダイ』や『DENGEKI電撃』のような「ヒップホップカンフーシリーズ」っぽいです。BGMにラップやヒップホップがガンガン鳴り響く、というような事はあんまり無いんですが(何故か音楽担当が、リュック・ベッソン映画でお馴染みのエリック・セラで、BGMはどちらかと言うとスコアの方が多かった気がします)、「ワイヤーを使った香港風アクションである」「でも中身はアメリカ製のアクション映画だ」「そのアクションシーンのカット割が細い」といった点から、似ているような感じがあるんですよね。
映画の出来や完成度なんかは、セガールの『奪還』と同じぐらいのレベルかな、という印象でした。あちらも、ヒップホップカンフーシリーズと似た感じのアクションでしたからね。流行の作風という事なんでしょうか。
ですが、この映画を楽しむに当たって、それらの映画よりも有利な点が一つあります。それは、主演がチョウ・ユンファであるという点です。この人が主演のおかげで、「もともとカンフーシーンに過剰に期待をしない」という精神状態で見られるので、「編集とカメラワークが早すぎて何が起こってるのかよく分からないアクションシーン」や「俳優のアクションをしっかり見せてくれないアクションシーン」を見せられても、他の、ジェット・リーやセガール主演作と比べて、ガッカリ度が相当低く抑えられるんです(“ガッカリ感”が発生するのはもう覚悟しないといけません・笑)。
また、ジェットもセガールも、役名は違えど、どの映画でもジェットならジェット、セガールならセガールにしか見えないのと違い(それが悪いという事ではもちろんありません)、ユンファは主人公であるチベット僧のキャラクターをかなり掘り下げて演じているという印象がありましたね。もう、この名無しのチベット僧というキャラクター自体が、見てて面白いものになってるんです。
本人がインタビューで「いつもにこやかにしてる香港の坊さんをイメージして演じた」と言うように、戦ってないシーンではほとんど仏のような笑みを顔に浮かべてるんです。これが、最初見たときは「こんな奴、本当にいたら、そざ怪しいだろうな」と思ったものですが、見ているうちに「きっと、本当にイイ奴なんだろう」みたいな感じに思えてくるんですよね。
また、ストーリーの流れ的に、全く出す必要の無い、「上着を翻しながら二丁拳銃でポーズを決める」という、ファンサービス以外の何物でもないシーンを入れてくれてる辺り、この人はファンの事を大事に思ってくれるいい人なんだろうな、と思わせてくれます。
どうも、本人はもう二丁拳銃はやりたくないらしいんですが、リクエストに答える形でやっているそうですね。素晴らしい事です。
この映画のもう一人の主役が、チベット僧に後継者と見込まれる若者カー役のショーン・ウィリアム・スコットです。
このカーという役柄も面白いものでしたね。序盤、スリの腕は凄いものの、戦闘力がどの程度なのか観客に知らされないまま、自らを“ファンタスティック”と名乗る、とっても素晴らしい感性の悪党とその一味に囲まれる、という状況になります。この状況を、結局強いんだか弱いんだかよく分からないまま切り抜けるんですが、その、敵に囲まれていながら臆さない勇気や、なぜか棒術使い並の棒の扱いを見せたりする所などから、「なにかしらポテンシャルのありそうな若者」という印象が感じられるんです。
結局、棒術なり格闘術などは、どこかで習ったものではなく、香港映画を見ながら独自に練習したものだという事が判明。何というか、映画で見て覚えた格闘技で、実際に悪党一味の襲撃を退けてるというのが、とっても夢のある設定のように思えてしまいます(笑)。と、同時に、「きっとこいつはいい奴だ」とも思えてしまえるんですよね。多分、「悟りを開いて宙を舞う坊主が悪と戦う映画」を見に来てるような人は、概ね、このカーという若者に好印象を持ったんじゃないでしょうか(笑)。
そしてこの、「映画好きのボンクラが無敵のチベット僧から後継者に見込まれ、ちょっと手ほどきを受けただけで重力を無視したような動きが可能になる!」というのは、何とも夢のある設定です。
特に、カーと私は「映画好きのボンクラ」という所に共通点があるので(その一点だけですが・笑)、そんな私にとってはある意味、シンデレラストーリーみたいなものでしたね。いつか私の前にも謎のチベット僧が現われて「お前には見込みがある」みたいな事を言ってくれないかしら(笑)。
この映画、見る前はもっと派手にワイヤーアクションが出たりするのかと思ってたんですが、実のところそういうシーンはそんなに多くないんですよね。なので、アクション面に関しては期待したほど楽しめなかったんですが、主役二人のキャラクターが面白かったので、映画としては面白く見ることが出来ましたね。
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