コラテラル


その夜は、いつものように始まった・・・

COLLATERAL
04年 アメリカ映画 120分

監督・製作:マイケル・マン
製作総指揮:フランク・ダラボン
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:トム・クルーズ(ヴィンセント)
    ジェイミー・フォックス(マックス)
    ジェイダ・ピンケット=スミス(アニー)
    マーク・ラファロ(ファニング)
    ピーター・バーグ(リチャード)
    ブルース・マッギル(ペドロサ)




<あらすじ>
勤続12年のベテランタクシー運転手のマックスはいつものように仕事に精を出していた。
今晩乗せた客、ヴィンセントは、「一晩で5ヶ所回ってほしい。代わりに大金を払う」と言ってきた。金が欲しいマックスはそれを引き受けるのだが、一軒目の仕事を待ってる最中、空から死体が降ってきた。実はヴィンセントは殺し屋で、この死体は彼の作品なのだった!
この時から、マックスの悪夢のような一晩が始まるのだった・・・。



<見た後の個人的感想>
タクシーにクールに乗るトム 大スター、トム・クルーズが悪役に挑戦した話題作です。ですが今回のトム演じるヴィンセントは、“悪い奴”と言うより、“ひたすらにクールでカッコいい奴”という印象でしたね。
劇中でも、人を殺したり主人公を脅したりと悪い事をするんですが、そのどれもが“悪事”に見えないんです。どう見えるのかと言うと、“クールでカッコいい”んです(笑)。
もう、普通に歩いてる姿ですら画になってましたからね。銃撃シーンがちょこちょこでてくるんですが、その際の、標的に対して一瞬の躊躇もなくバンバン連射する様はこれまた凄くカッコ良かったです。なにやら銃の撃ち方も猛練習したそうですね。さすがに自分の魅せ方がよく分かってると感心してしまいますね。
これを悪役と呼ぶなら、これまでにない、新しいタイプの悪役と言えるかもしれないですね。

ストーリーは、人のいいタクシーの運ちゃんマックスと、当初は客として乗車した殺し屋ヴィンセントとの一晩の騒動を描いたものです。
元々ヴィンセントは、自分が殺し屋である事を隠し、まっとうな仕事でもって一晩で5ヶ所回って欲しいと頼み、運転手はヴィンセントの正体を知らないまま終わる計画でした。
ですが、第一の標的が、死に間際に窓から転落し、マックスの乗るタクシーに落下してきた事から、ヴィンセントは自分の正体を明かし、銃で脅して運転を続けさせる事となります。
マックスにとっては、この第一の標的の落下は不運な出来事のように思われますが、実は、このヴィンセントの「足にタクシーを使う作戦」において、仕事が完了した際に運転手は消される事になってるようなんです。なので、この標的の落下事故は、マックスにとっては運命のいたずら的に幸運な出来事だったんですよね。
これまでヴィンセントを乗せた運転手達は、その正体に気付くこともなく、油断したまま殺されて行ったんでしょうからね。

トレインをワイルドに歩くトム さて。自分の正体を知られたうえで、さらに運転手に仕事を続けさせねばならない、というのはかなり難しい事のように思えます。何しろ、自分が標的を殺しに行ってる間、運転手にはその場で待っていてもらわないといけないんですからね。もし逃げられたら、移動手段を失うわ警察に通報されるわと大変な事になってしまいます。でも、一人で置いておいたら逃げるに決まってます。
かといって、縛っておいたら、通りかかった人に不審に思われてしまいますし、トランクに入れておくという方法も、すでにトランクに先客が入っているので(ちなみに、第一の標的がここに入れられてます)無理です。
で、ヴィンセントはこの問題をどうしたのかと言うと、「逃げたり、変なマネをしたら、無関係の人を殺す」という、目からウロコな脅しをしかけてきました。一風変わった人質作戦ですね。
人によっては、「自分のせいで誰が死のうが関係無い」と逃げ出す人もいると思いますが、マックスはそういうのが出来ない人なんですよねぇ。多分、そういう事を見抜いたうえでの作戦なんでしょう。
まあ、もちろん、脅しをかけておく以外にも、マックスが逃げ出さないような小細工はしていくんですけどね(まあ、結局縛るんですけどね・笑)。

この後、標的のいる場所を巡りながら、マックスとヴィンセントのやりとりや仕事ぶりなどが描かれていきます。
このように、マックスとヴィンセントの二人が中心となるストーリーなので、この二人をいかに魅力的に描くかが映画の面白さのポイントとなってくるわけです。
ヴィンセントの方は、上で書いたように、ほぼ問題無し。何しろ、演じているのが世界最高のスーパースター、トム・クルーズだけに、一人でも映画を引っ張れるだけの魅力とパワーが溢れ出ていました。もはや、これ一作だけでは物足りなく感じるぐらいのいいキャラクターを創造していましたね。
一方のマックスは、演じるのがスターではなく、売出し中の演技派系俳優です。という事は、キャラクター描写が優れてないとトムにパックリ食われてしまうという、恐ろしい状況です。
デンジャラスに銃を構えるトム ですが、マックスを演じるジェイミー・フォックスの実力か、監督のマイケル・マンの演出力か、「トムだけが光る」という事態にはさせませんでした。
まず、映画の冒頭部分で(ヴィンセントが登場して、映画が本筋に入る前の段階)、マックスの人柄を完璧に描ききってしまってるところが凄いです。もう、冒頭5分から10分ほどで、「マックスはイイ奴なんだな」と見ていて親近感を覚えさせてしまうんですよね。
マックスには、将来、リムジンサービスの会社を始めるという夢があるんですが、その夢に対して一歩踏み出してみるなど具体的な行動を起こすというわけでもなく、ただ夢を見続けながら今の暮らしを続けている、という状況です。
世間では負け犬と呼ばれる人種ですが、決して少なくはない人種じゃないかと思います(笑)。これに、「具体的な夢すら持ってない人」というのを加えると、勝ち組みよりも総数は多くなるに違いない。
そんな大多数の庶民にとって、マックスは近い立場の人だと思うんですよね。 さらに、わざと遠回りをして客から金をボるといった事もしない、クリーンなタクシー運転手であるというナイスガイぶりも見せてきます。
で、そんな庶民派な人が恐ろしい事件に巻き込まれてしまうわけです。これで、後のストーリー展開にも自然にのめり込んでいけるんですよね。



<プログラム情報>
・定価600円。全22ページ。プログラムサイズ“横長”
・ストーリー2ページ
・プロダクション・ノート3ページ
・主要キャスト・スタッフのプロフィール2ページ
・写真だけのページ14ページ


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(下の方にネタバレ有りの感想があります)
















一般的には、「マックスがヴィンセントに感化されて強気に変わって行く」というようなストーリーだと言われていますが、私にはそういう感じは見ててしなかったんですよね。
ではどう思ったのかと言うと、「マックスは極限状態に置かれた事で、火事場の馬鹿力を出しただけ」だと思ったんです。当初は行動派ではなかったマックスですが、終盤ではヴィンセントもビックリなアグレッシブ・メンに変化します。例えば、ヴィンセントに歯向かったり、悪い奴らとの交渉をやり遂げたりといった事ですね。
でも、多分この行動力は一晩限りのもので、事件後は元のタクシー運転手に戻るような気がするんですよね。
ただ、もちろん、事件前と全く同じ状態に戻るというわけではないでしょうけどね。近い内には、夢に向かって進みだす、という事にはなるような気がします。でもそれは「ヴィンセントと過ごした数時間」が直接の原因ではなく、「あの夜を生き延びた事から来る自信」と「アニーとの出会い」の方がデカい要因になると思うんですよね。アニーとはあれっきりで終わるとは思えないですからね。それで、「アニーにいい所を見せたいが為に頑張ってみる」という事はあると思います。
で、そこで行動を起こす際に、あの夜を生き延びた事から来る自信は、前進するのを大いに後押ししてくれるものになるでしょうからね。

なぜこんな事を思ったのかと言うと、まず、ヴィンセントとの会話の中に、「負け犬を奮起させるだけの言葉」が無かったからです。と、マックス以上の負け犬、と言うか、負け豚な私は思いました(笑)。ちょっとカリスマチックな奴を乗せたただけで人間変われるようなら苦労は無いっつうの。



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