ドーン・オブ・ザ・デッド


<DAWN OF THE DEAD>
04年 アメリカ映画 97分

感染するまで、終わらない――。

監督:ザック・スナイダー
脚本:ジェームズ・ガン
出演:サラ・ポーリー(アナ)
    ヴィング・レイムス(ケネス)
    ジェイク・ウェバー(マイケル)
    メキー・ファイファー(アンドレ)
    マイケル・ケリー(CJ)
    ケビン・セガーズ(テリー)
    リンディ・ブース(ニコール)
    タイ・バレール(スティーブ)
    ジェイン・イーストウッド(ノーマ)
    ボイド・バンクス(タッカー)
    インナ・コロブキナ(ルダ)
    R・D・レイド(グレン)
    キム・ポイアリー(モニカ)
    ブルース・ボーン(アンディ)
    マット・フルーワー(フランク)
    ジャスティン・ルイス(ルイス)
    ハンナ・ロックナー(ヴィヴィアン)




<あらすじ>
突如、世界中にゾンビが大量発生!しかも、このゾンビ達は猛ダッシュ&怪力で襲ってくる武闘派ゾンビなのだ!これに噛まれた人はゾンビ菌が全身に回って、間もなく死亡。そして、その後すぐにゾンビとして復活してしまうのだ。

この新種のゾンビの猛攻から命からがら逃れて来た数名の人々が、郊外のショッピングモールに立て籠もり、決死のサバイバルを繰り広げるのだった。



<見た後の個人的感想>
モールに集った面々 ジョージ・A・ロメロの傑作映画『ゾンビ』のリメイクです。大方のゾンビ映画ファン及びロメロ信者は、『ゾンビ』がリメイクされる事に少なからず反感を抱いていたようですね。
もちろん、私も自称ですがゾンビ映画ファンですし、ロメロ監督が天才だと信じて疑わないという、信者的な考えも持っています。なので、『ゾンビ』のリメイクをロメロ抜きで作ると最初に聞いた時はちょっとムッとしたものでした。

ですが、何しろ私にとっては「劇場の大画面で、大作ゾンビ映画を見る」のが物心ついた時からの夢だったので(←誇張し過ぎ)、とにかく、“メジャースタジオの大作映画としてゾンビ映画を作ってくれる”という事を素直に喜んで公開を待つ事にしました。

もちろん、不安もかなりありましたね。「今度のゾンビは走る!」という情報が耳に入った時はガッカリしましたし、去年、同じく走るゾンビ(正確にはゾンビではないんですが)が出てくる、ロメロのゾンビ3部作への中途半端なオマージュが顔を出していた『28日後』という映画に肩透かしを食らっていたので、「こんな出来だったらイヤだな」という思いもありました。

ですが!実際に公開され、不安と期待の入り交じった中見た『ドーン・オブ・ザ・デッド』は、それはイカしたゾンビ・アクション映画になっていたんです!

一番感心したのは、ロメロのゾンビ3部作へのオマージュが本当に形だけのものでしかなかった点ですね。リメイク元の『ゾンビ』との接点は、舞台としてショッピングモールが出て来て、登場人物がそこに立て籠もる、というシチュエーションのみで、後は全くの別物になっていたんです。
この映画がリメイクである事を考えると、本来なら批判して然るべきな点かもしれないですが、下手に旧『ゾンビ』を再現しようとしても失敗するに決まってるんです。だって、『ゾンビ』を監督したのはロメロですが、この映画の監督はロメロじゃないですからね。
これまで大量の作られてきたゾンビ映画の中で、ロメロのゾンビ映画に匹敵する映画が一本たりとも無かった事から分かるように、旧『ゾンビ』はロメロが脚本を書き、監督をしたからこそ生まれえた映画なんです。いくらリメイクだからって、ロメロの『ゾンビ』に匹敵する映画が出来るわけが無いんです。
もし、そこを下手に意識して、オリジナルの良かった要素を再現したり、オマージュに溢れたシーンを出すなど、旧作の精神に近づけようとすればするほど、オリジナルとの面白さの落差が気になる中途半端な映画になったと思います。
だから、オリジナルの要素の再現(テーマも映画の雰囲気も)をさながら意識して避けているかのようなこの映画の演出はまさに大正解だったと思います。おかげで、一本のゾンビ映画として心から楽しむ事が出来ましたからね。

ゾンビの運動会の様子(ウソ) さて、このリメイクで旧作から変更された要素の中で、一番大きいのが「ゾンビの性質」でしょうかね。旧『ゾンビ』のノロノロゾンビを、新『ドーン〜』では元気に走ってくる『28日後』の感染者タイプに変更されました。
上で書いた通り、最初にこの設定を聞いた時はガッカリしたんですが、見てみたら、この“走るゾンビ”にはノロノロゾンビには無い怖さがありましたね。
ゾンビに限らず、殺人鬼や妖怪なんかも、人を追いかけるスピードが早いと脅威を感じるものです。ジェイソンが『3』か『4』辺りで走って襲って来る様を見た時も怖かったですし、昔“口裂け女”の噂を聞いた際も、コイツの「逃げられないぐらい早く走って追って来る」という設定に恐怖を感じたものでした。
また、『28日後』の感染者や『デモンズ』のデモンズ軍団は「ゾンビっぽいけどゾンビではない」という雰囲気がありましたが、『ドーン〜』の全力ゾンビはそれらと似た性質ながら、ちゃんとゾンビに見える所が凄いですね。メイクがきちんとゾンビメイクになってるせいでしょうか。

これまでにも、走るゾンビが出て来る映画はありましたが、ゾンビの世界ではあくまでも“亜種”という位置付けにいたと思います。ですが、あの『ゾンビ』のリメイクで走りゾンビが出てきたという事は、これはゾンビの世代交代が来たという事なのかもしれないですね。
とは言え、今回の『ドーン〜』では、映画の内容的に、ゾンビが全力で襲ってくるという事は成功していたと思いますが、やっぱりゾンビは“ノロノロ”&“大量”で襲ってきている姿が一番輝いていると思うので(輝く?・笑)、次に大作ゾンビ映画を製作する機会があったら、どうにかノロノロゾンビを復活させてほしいところではありますね。

全力ゾンビーズ 『ドーン〜』のゾンビの話に戻りますが、今回の全力ゾンビ、一体でもかなり脅威的な存在だと思うんですが、これが群れで、しかも猛スピードで走って襲って来るんですからたまらないです。そのゾンビの群れの数も、“CGによる水増し技術”により、まさにスクリーンを埋め尽くさんばかりの大変な数となっています。
この映画での登場人物達のサバイバルの難易度は旧『ゾンビ』の比じゃないでしょうね。多分、この映画でゾンビに襲われる事は、パニック映画で溶岩や竜巻に追われるのと同じぐらいの脅威と絶体絶命感がありそうです。
そして、この、ゾンビがあまりに脅威的だという点は、映画のテーマすらも旧作から変えてしまってるんですよね。ロメロの『ゾンビ』シリーズではゾンビの脅威の他に、“生きている人間の脅威”も描いていました。ですが、今回の『ドーン〜』では、もはや人間が脅威になるような余地が無いぐらい、ゾンビがあまりに脅威的なんです。
こうなると、もう仲間割れをしてる暇なんてありません。見てる方としては、主役を始めとする主要登場人物には生き残って欲しいと思いながら見ているわけですから、「勝手な主張を繰り返して調和を乱そうとする」とか「バイクで押し寄せてショッピングセンターを荒らす」「独裁者を気取り、皆を支配しようとする」など、勝手な行動をとる人間に出てこられると逆にイラつかされると思います。もう、みんなで協力し合わないとならない状況ですからね。そして実際に、誰かが勝手な行動をとる度に、確実に犠牲者が出るんですよね。
この、登場人物達の「死と隣合わせ度」は、まるで戦争映画みたいですね。戦場と違うのは、死んだら敵の仲間になってしまうところでしょうか。そのせいか、戦争映画並に人の命というものが大事なものに思えてきます。
“死”というのは怖いものですが、この映画では“個人の死”だけで終わらず、他の生者にとっての脅威と変わるわけですからね。それは他のゾンビ映画でも言える事ですが、今回のゾンビは“全力ゾンビ”だけに、生者に対する脅威はノーマルゾンビよりもはるかに上です。
そこまでゾンビが脅威的に描かれている為、むしろ、“人の命の尊さ”というのが感じられてくるんですよね。見ててこんな事を思ったゾンビ映画はこれまでに無かったですね。
登場人物達も、「もう助からないだろう」という状況の人を危険を冒してまで救出に向かったりしますが、この一見バカな行動も、裏には「出来るだけ多くの生きている命を救いたい」という思いがあるんでしょうね(『デイ・アフター・トゥモロー』の宣伝コピーみたいですが・笑)。

全力ゾンビーズに襲われる人 さて、私が見る前に不安に思っていた要素の一つに、「登場人物のキャラクターはよく出来てるんだろうか」というのがありました。主要登場人物がどんなキャラクターか、というのも映画の面白さを左右する重要な要素です。
で、この『ドーン』の登場人物ですが、オリジナルよりもかなり増えた、どちらかと言うとゾンビ映画より、パニック映画の登場人物のような面々が揃ってましたね。ゾンビ映画であると同時に、“世界規模パニック映画”でもあるわけなんですね。
ゾンビパニックが世界規模だというのはオリジナルでも同じでしたが、「パニック映画っぽい」という印象はあまり無かったですからね。ここも旧作から変更した点でしょう。

パニック映画同様、登場人物それぞれのドラマが、深く掘り下げられているわけではないものの、語られていく事となります。例えば、主人公的立場のヒロイン、アナと元セールスマン、マイケルのロマンス、黒人警官ケネスと、銃砲店の店主アンディとの友情、黒人青年アンドレと妊娠中の妻のエピソードなどなど。
そして、この中で一番面白くなさそうな“アナとマイケルのロマンス”が見事にはしょられていた点にまた感心(笑)。そうです、こんなところ、軽く流しちゃってもいいんですよ。でも、これがなかなか出来ないホラー映画(&パニック映画)がよくあるんですよね。
また、ゾンビ映画お約束のエピソードであるところの、「親しい人がゾンビ化してしまう恐怖」もしっかり出てきている所は嬉しいですね。ここはパニック映画には無い、ゾンビ映画ならではな要素ですからね。


この映画、ゾンビの行動スピードに比例するかのように、映画のスピードもメチャクチャ早かったですね。もう、早回しで見てるのかと思ってしまうぐらい、展開が早いです。まさに、トイレに立つ暇も無しです(中盤にちょっと展開がスロー気味になる所もあるにはありましたが)。
中には、映画が始まってからゾンビが出て来るまでかなり時間が掛かる映画もあるというのに、この映画ではもう開始10分でゾンビパニックが始まってますからね。
あと、この冒頭の展開は凄かったですね。映像もパワフルでしたし、これで観客を一気に映画の世界に引き込んでしまいますね。そして、それが一段落してからようやくタイトルが出て来るというのも凝った演出で面白かったです。

と、期待していた大作ゾンビ映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』ですが、このように期待に見事応えてくれた素晴らしい映画になっていました。ただ大画面でゾンビが見られれば満足だったものを、ここまで出来のいい映画を見せてくれた製作陣にはただただ感謝です。



<プログラム情報>
・定価600円。全22ページ。プログラムサイズ“普通”
・イントロダクション1ページ
・ストーリー2ページ
・監督ザック・スナイダー&主演サラ・ポーリーのインタビュー合わせて2ページ
・映画文筆家、鷲巣義明氏の解説2ページ
・ゾンビ映画研究家、伊東美和氏による「ゾンビ映画の歴史」2ページ(ゾンビ映画年表付き)
・サバイバル・ガイド2ページ
・登場人物の紹介&生死2ページ
・プロダクション・ノート3ページ


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(下の方にネタバレ有りの感想があります)
















この写真を見る限りじゃ絶体絶命的状況
(でも本編ではあっさり脱出) オリジナルではヘリで脱出して終わりましたが、今回は船で脱出して終わりでしたね。ですが、オリジナルと違い、「脱出後にどうなったか」というエピローグが出てきましたね。最後の最後までオリジナルと差別化を図ってるとは芯が通ってます。
で、そのエピローグが「バッドエンド」というのがまた思い切った事をしたなという感じですね。まあ、ホラーではよくあるタイプの終わらせ方ではあるんですが(笑)。

このエンドクレジットのエピローグですが、もうちょっと落ち着いた編集にしてほしかったですねぇ。あれじゃ、前の方に座った人は何が映ってるんだか分からなかったんじゃないでしょうか。
あと、クライマックスのゾンビ大襲撃のシーンもかなり忙しい編集でしたね。CMとかMTV出身の若手監督はどうしてもこれをやってしまうんですね。この映画の唯一の不満点が、ゾンビの襲撃が見づらかったという点でしたね。
ただ、ゾンビが全力で襲ってくる様なんて、一歩間違えると滑稽に見えかねない映像ですからね。あれぐらい忙しい編集じゃないと怖さが出なかったのかもしれません。難しいところですねぇ。

で、結局のところ生き残りの皆さんはあの後どうなったんでしょうかね。逃げる事は出来たんでしょうか。どうやら、ワンちゃんは島の方に走って行ってしまったようなので、置いてきぼりは確定ですが。
そう言えば、「ゾンビは犬には見向きもしない」という設定は新しかったですね。もしかしたら過去にもそういうタイプのゾンビはいたのかもしれないですが(要するに、人間しか襲わないというタイプ)、その設定がストーリーに関わってくる事は無かったですからね。
それにしても、危険極まりない全力ゾンビの間を縫ってチョコチョコ走っていくワンちゃんの姿は可愛らしかったですねぇ。ちょっとした息抜き的サービスショットなんでしょうか。でも、人は死にまくるのに、犬は無事に生き残るというのは、何ともパニック映画的ですなぁ(笑)。

ところで、ゾンビ達は犬は襲わないですが、家畜などの食用動物はどうなんでしょう。特にブタなんて見るからに美味そうですからねぇ。やっぱり各養豚場が襲撃されてるなんて現象も裏で起こってたりするんでしょうか(そして、ゾンビ化したブタも出現してるかも・笑)。



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