ヘル


完全脱獄!

IN HELL
03年 アメリカ映画 97分

監督:リンゴ・ラム
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム(カイル・ロード)
    ローレンス・テイラー(451)
    ロイド・バティスタ(将軍)
    クリストファー・モア(ビリー)
    ビリー・リーク(クールハンド)
    マラカイ・デビッドソン(マラカイ)
    マーニー・アルトン(グレイ・ロード)






<あらすじ>
モスクワの石油工場で働くカイルに悲劇が訪れた。家に帰ったら妻が何者かに殺害されていたのだ。犯人は逮捕されるものの、裁判では判事が買収され、証拠不十分で無罪にされてしまった。怒ったカイルは、その場で犯人を射殺してしまう。
かくして、殺人罪で逮捕されたカイルは終身刑を言い渡され、最も厳しい刑務所と言われる、クラヴァヴィ刑務所に送られる事となった。
囚人達は、地雷の埋まる危険地帯で線路作りの作業をやらされたり、賄賂にまみれた看守やケツを狙うホモの攻撃に耐えなければならないのだ。
そして、クラヴァヴィ名物、スパルカ。これは、所長が賭けに利用している、囚人同士を死ぬまで戦わせる一対一のバトル大会なのだ。

カイルは、この地獄のような場所で生き抜く為に野獣になる事を決意。体を鍛え上げると、スパルカに参戦。次第に名うてのファイターへと成長をしていくのだった。
しかし、カイルと同房の、囚人ナンバー451という男が、そんなカイルに「自分を見失っている」と警告を与えるのだった。



<見た後の個人的感想>
ヴァン・ダム二本目の刑務所映画ですが、前の『ブルージーン・コップ』よりも、どちらかと言うと刑務所物ではない『レジョネア』っぽい感じの映画でしたね。ストーリーが似ているというわけではなく、なんとなく雰囲気が似ているという感じなんですが。
アクションよりもストーリーがメインな作りなんですが、どうにも地味で暗い感じがします。そして、ひたすらに汗臭く、男臭い。という、まさに見る人を選ぶタイプの映画と言えそうです。何というか、エンターテイメント度が、同じく汗&男臭満載の刑務所映画『ロックアップ』と比べてもかなり低い感じです。
舞台となる刑務所もまさにタイトル通りの場所で、中にいる人々も凶暴な囚人から悪徳看守などヤバい連中ばっかりです。理不尽な話でこんな場所に来てしまったヴァン・ダム演じる主人公のカイルも、この場所に順応していく為に、暴力に明け暮れる野獣へと変貌する始末です。
また、カイルはこの刑務所ではかなり問題児で、しょっちゅう独房に入れられたりするんですが、この独房がまた見ていて気が滅入るぐらい汚い。中盤辺りなんて、ヴァン・ダムは他の囚人と殴り合ってるか独房にいるかのどっちかしかないぐらいでしたからね。もう、見ていて重苦しい事このうえないです。
その殴り合いのシーンは、まさに肉と肉のぶつかり合いといった感じの荒々しいファイトになっていて、当然、開脚や回し蹴りなんて華麗な技が出る余地もありません(開脚は“華麗な技”なんだろうか・笑)。ただし、この重々しいファイトシーン、見応えはあります。
この辺の要素を「マイナス要素」として見ずにいられるかどうかが、この映画を楽しめるかどうかのカギでしょうかね。

映画の重要人物として、カイルと同じ房にいる黒人、囚人ナンバー451という奴がいます。驚いた事に、名前無しです。
こいつが人間の心理について哲学するのが好きらしく、こいつの日記帳は、もはや451流哲学書と化しています。で、この日記帳を盗み見した事から、カイルは次第に人間らしさを取り戻そうとし始める事となります。ちなみに、具体的にどんな事が書いてあったのかは覚えてません(笑)。
この451、終盤まで喋るシーンがほとんどありません。カイルと同室なのに、会話無しです。ですが、時たまナレーションみたいな感じで、こいつの人間心理に対する講釈みたいなのが要所要所で挿入されます。
こういう要素が出てくると、何か「深い映画」なような気になってきますね。

監督のリンゴ・ラムは、香港時代にもこんなような刑務所映画を撮った事があったらしいですね。そして、もともとはアクション系の監督ではなく、ドラマ系の監督なのだとか。いやぁ、それは気が付きませんでしたね。でも、確かにツイ・ハーク監督作よりはストーリーがしっかりしていたような気がする(笑)。
この映画にも、死んだ妻が蛾の姿となってカイルの元に現れるという詩的な場面が出て来たりします。そして、ナンバー451の人間論といい、これまでヴァン・ダムが出て来たようなアクション映画とはまた違った要素が出て来てるようですね。
問題は、そういったシーンが単純に“見ててあまり面白くない”という点でしょうか(爆)。何か、ハリウッドっぽくないんですよね。やっぱり、映画の精神がアメリカ映画よりも香港映画に近いんでしょうか。思えば、『レプリカント』のストーリーにもちょっと泥臭い所が出ていたような気もしましたが、舞台が刑務所のこの映画、その泥臭さがさらにアップしてしまったようです。
ただ、この辺がこの映画の個性でもあるわけですからね。後はもう、見る人の感性に合うか合わないかでしょうね。で、私は合いませんでした(爆)。もし主演がヴァン・ダムじゃなくて、登場人物全員が見ず知らずの人とかだったりしたら、全く同じ内容でも、もう見た事を後悔するぐらいにつまらなく感じた事と思います。
ですが、主演がヴァン・ダムであった為に、ドラマシーンも見ていられましたし、アクションシーンも見応えのあるものになっていました。ま、私は基本的に、映画は“スター目当て”で見てますからね(笑)。



<キャストについて>
ひたすらにマッチョアクション映画に出続ける我らがスター、ヴァン・ダムですが、たまにこういう“ドラマ重視”のアクションに出て来ますね。『ライオンハート』とか『ボディ・ターゲット』とか『レジョネア』とか。でも、この3作は大好きなんですけどねぇ・・・。

囚人451役のローレンス・テイラーは元アメフトプレイヤーというゴツい奴です。『エニイ・ギブン・サンデー』なんかにも出てたりするそうな。
見るからにアクションをやりそうですが、この映画では知的な囚人の役なので、全くアクションしません。
まあ、スパルカの相手役ではもっと凶暴そうなのが出て来るんで、別にいいですけどね。



<プログラムについて>
定価300円。激安ですが、内容も全部で6ページほどというペラペラプログラム。ですが、無いよりははるかにマシです。
それに、イントロダクション、ストーリー、主要キャスト&監督のフィルモグラフィーとちょっとした解説、評論家による映画の解説と、最低限の情報は載ってるんですからね。
それにしても、最近のヴァン・ダムのアメリカで直ビ扱いの映画群、このペラペラプログラムは必ず作ってくれてるんですよね。セガールの映画も次はこんなのでもいいから作っておくれ(あと前売り券も!)。



<画像の下より、ネタバレ有りの感想>

ヒゲヴァンダム とっ捕まるヴァンダム バトルの最中のヴァンダム



独房に入れられていた時、常に隣の房から叫び声とも唸り声ともつかないような不気味な声と壁を叩く音がしてました。こいつの正体が、所長の最終兵器の人間モンスターで、カイルを襲う為に放されるんですが、カイルはこの知能もほとんど退化してるような人間モンスターと、「壁を叩く音」でコミュニケーションをとる事に成功。
ここのシーンは何か感動的でしたね。結局こいつは撃たれて死んでしまうわけですが、死の間際に唯一の友達とも言えるカイルに看取られたんですから、こいつにとってはいい最期と言えそうですね。それに、これでもう独房に戻る事も無いですし。



<エンディングについて>
エンドクレジットの曲は、映画の内容とはあまり合って無い、普通のアクション映画のような曲でした。



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