
監督・脚本:ブラッド・バード
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッチーノ
声の出演:クレイグ・T・ネルソン(ボブ・パー/Mr.インクレディブル)
ホリー・ハンター(ヘレン・パー/イラスティガール)
サラ・ヴァウエル(ヴァイオレット)
スペンサー・フォックス(ダッシュ)
ジェイソン・リー(シンドローム)
サミュエル・L・ジャクソン(フロゾン)
ブラッド・バード(エドナ・モード)
ウォーレン・ショーン(ハフ)
エリザベス・ペーニャ(ミラージュ)
それから15年後。ボブは、同じくヒーローとして活躍していたイラスティガールことヘレンと結婚し、3人の子供をもうけ、普通の家庭人としての生活を続けていた。だが、昔の栄光の日々をいまだ忘れる事が出来ず、悶々とする日々だった。
そんな時、ボブのヒーローとしての腕を見込んでの仕事の依頼がきた。その依頼を受け、謎の火山島に飛んだボブだが、全てはヒーロー抹殺を企む悪者、シンドロームの罠だったのだ。
まんまと敵に捕らえられたボブ。だが、スーツに仕込まれていた発信機を追って、ヘレンと子供達が島に向かって来ているのだった。
毎回、質の高いCGアニメを世に送り出しているピクサー社の最新作は、CGでは表現が難しいとされる「人間」がメインの作品でした。
この映画の何がいいかって、まずはその題材ですね。これまでの、おもちゃや虫、魚のドラマもそれはそれで面白いですが、どちらかと言うと「子供向け」という感じの題材でしたからね。もちろん、大人でも楽しめるレベルの出来でしたが、対象はやっぱり子供でした。
ですが、今回は「ヒーロー物」という、『スパイダーマン』や『スーパーマン』なんかと同じジャンルです。昨今、ハリウッドではコミックヒーロー物の映画がブームですが、それと同じようなものですね。対象とする年齢層も、これまでよりは若干上になり、まさに私の精神年齢にちょうど合った内容となりました(笑)。
私も、ヒーロー物の映画は『スパイダーマン』以来好きなジャンルで、この映画以降に公開されたコミック原作映画はほとんど劇場に見に行ってるぐらいです。
それぐらい、私の中でもブームなジャンルですが、もう、その中でも、最高傑作『スパイダーマン』に競るぐらいの面白さでした。
「ヒーローが世界に何人もいる」という世界観や、「主人公達は現役のヒーローではない」「主人公ら、ヒーローチームが“家族”である」という設定はかなり新鮮でした。特に、現役のヒーローではない事や、無闇にスーパーパワーを使ってはいけない事への理由付けがまたユニークでしたね。「いくら訴訟社会とはいえ、ヒーローは訴えないだろう」とは思うんですが、今までにない、面白い理由付けでもあるんで、OKでしょう。
ヒーロー活動を禁止されたが、昔のように活躍したいと悶々とする主人公のボブ。彼にとってはまさに「耐え」の時期ですが、映画的にも、アクションシーンが起こらないんで、地味な時期でもあります。
『スパイダーマン2』でも、このような「耐え」の時間帯がありましたが、あちらは個人的な理由によるものでした。ですが、こちらは、法律で決められてしまった事で、本人の意志ではありません。多分、独り身だったらそんな法律破ってでもヒーロー活動を続けたと思いますが、今のボブは家族を養わなければならない立場です。3人目の子供も出来、引っ越しも完了し、ようやく落ち着いて来たので、ここで問題を起こす訳にはいかない、という状況です。
ヒーローとしての責任をとるか、父親としての責任をとるか、という問題がのしかかってるんですが、そういう葛藤をしつこくなく描いてきます。ここは、ファミリー向けという事で、主人公の悩みを深く描くという事は敢えて避けてるんでしょうね。でも、そのおかげで、展開が早くなり、ダレる所が無くなりました。
また、『スパイダーマン2』と同様、裏路地で行われている暴力事件をヒーローが見逃す、いう場面があるんですが、ここでのボブの「葛藤」から「暴発」の流れが、「きっと自分がボブの立場でもこうなるよなぁ」と感情移入して見る事が出来ましたね。
『スパイダーマン2』の、個人的な悩みをしつこいぐらい描いてくるという手法もいいですが、私はこっちのあっさり風味の方が好きですね。アクション映画なんですから、このぐらいのテンポがあった方がいいです。
さて。そんな「耐え」の時間を経てからようやく始まるアクションシーンですが、これが「待った甲斐があった!」と思うぐらいの大迫力!
実写+CGとは違う、オールCGのアニメという事で、もうどんな動きもカメラアングルも自由自在です。それを存分に活かした、スピード感バリバリのアクションシーンの迫力たるや、もう、興奮必至!といった感じでしたね。
メインキャラクターはインクレディブルの家族で、一家揃って特殊能力を持っています。普通の犯罪者が相手なら、誰の助けもいらないぐらい、それぞれ凄い能力を持ってるんですが、今回は敵が超強力です。銃で武装した兵士達に、高速で移動する、機銃付きの円盤型マシーン。さらに、凄い科学力で作ったスーパー装置を身につけた悪者に、ボールに触手の生えた形の鋼鉄巨大ロボットと、それこそ、数いるヒーローの中でも、ハルククラスの化け物じゃないと一人では太刀打ち出来無さそうな手ごわい奴らです。
そんな連中にヒーロー一家が、それぞれバラエティに富んだ能力を駆使して立ち向かって行くんですが、このチームバトルがとっても新鮮でしたね。それぞれがただ単品で技を出し合うだけではないんです。X−MENにも、これぐらいのチームワークがあれば、敵との戦いももっと楽になるでしょうにとか思ってしまいます(笑)。
ただ、この“チームバトル”を見せるのは後半になってからで、それまでは家族それぞれが単体で活躍していく見せ場が盛り込まれています。
インクレディブルと敵ロボットとの一騎打ちに、インクレディブル夫人ことイラスティガールの敵基地潜入アクション。そして長男ダッシュと円盤型高速艇とのチェイスシーンと、その能力を最大限に“魅せる”アクションシーンが出てくるんです。ただ、なぜか、ヴァイオレットにだけ、単品の見せ場が無かったですね。
アクションシーンだけでもまだまだ語れるぐらいに濃い内容ですが、それにプラスして「ストーリーの面白さ」というのもあるこの映画。もちろん、CG映像も見事ですし、音楽もかっこいいです。もはや死角は全く無しと言っても過言ではないぐらいに完璧な映画ですね。むしろ、完璧過ぎるのが欠点とも言えるぐらいです。
少なくとも、「家族」というものに嫌な思い出がなければ、実年齢や精神年齢に関係なく、誰でも楽しめるんじゃないですかね。
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話は変わりますが、敵のシンドロームは、かつて、インクレディブルに憧れるファンでしたが、本人に冷たくされた事で逆恨みをし、悪に走ってしまいました。
ヒーローのインクレディブルが、自分の行いによりとんでもない悪人を生み出してしまったというのはなんとも皮肉な話です。そもそも、ヒーロー活動を停止させられた原因も、ヒーローがヒーロー活動をしたのが原因という、これまた皮肉なものでしたからね。
そんな背景で誕生した悪役シンドロームですが、インクレディブルがコイツに狙われるのも自業自得だとも言えます。ですが、これでインクレディブルを責めるのは酷だと思いますね。
例えば、「憧れの対象が、自分の思ってた人と違ったので、急に嫌いになり、バッシングを始める」という行為。ファン心理にはありがちなものですが、決して褒められた行為ではありませんよね。で、シンドロームが悪に走った動機は、まさにここから来てると思います。
「ファンだったけど、ファンである自分を大切にしなかったから憎む」というのは、現実の、ファンとスターの間でも起こり得る事態ですが、決して、悪に走ってもいい理由にはなりません。シンドロームとは、この行為がいかにカッコ悪いものかというのを表現した存在というふうに見えましたね。
ところで、コイツは自分にスーパーパワーが無いのをひがんでましたが、数々の強力な兵器を作り出した科学力は充分、スーパーパワーと呼べるものなんじゃないんだろうか(笑)。
自分の発明した装備品を身につけただけで、空を飛び、指からはインクレディブル一家を一度に封じてしまうビームを出せるんですから、もうスーパーパワーなんていらないじゃないですか。多分、あの世界の全ヒーローの中でも、フル装備のシンドロームが一番強いんじゃないかと思いますね。
ですが、ヒーローの強さとは、スーパーパワーだけにあらず。精神的な強さがあってこそのスーパーヒーローです。その、精神的な強さが備わっていないのに、能力だけは凄いものを持っているシンドロームは、やっぱり一番危険で厄介な存在なんですよね。