沈黙の標的


無敵

OUT FOR A KILL
03年 アメリカ映画 90分

監督:マイケル・オブロウィッツ
共同製作・共同脚本:スティーブン・セガール
出演:スティーブン・セガール(ロバート・バーンズ教授)
    ミシェル・ゴー(トミー・リン)
    コーリイ・ジョンソン(エド・グレイ)
    チョーイ・ケン・ベー(ウォン・ダイ)
    ケイト・ドードー(マヤ・バーンズ)
    マイケル・ジュニア・ハーベイ(キング)







<あらすじ>
考古学の教授ロバートは、中国国境付近で助手と共に発掘作業をしていた。だが、現場に何やら怪しい連中がウロついている事に気付いた。さらに、大学に郵送する予定の出土品の入った箱の封印も解かれていた。中を確認してみると、何と出土品の中に麻薬が詰め込まれていたのだ。
問題が起こりそうな気配を察知したロバートは助手を連れて車でその場を逃げ出すが、連中は後を追って来た。そして銃撃をされて助手が死亡してしまう。さらに、謎の連中を撒いたと思いきや、国境で中国政府にとっ捕まってしまうのだった。
この追って来た連中は、中国人マフィアによる国際的麻薬組織の秘密結社の連中だった。そして、こいつらを追って中国国境に来ていたDEA捜査官と中国政府は、ロバートが麻薬の密売をしている仲間だと思い、刑務所送りにしてしまうのだった。ロバートが入れられた房には、不法入国で捕まったキングという男がいた。

DEAは、ロバートを釈放して泳がせてみようという作戦に出る。
釈放され、アメリカに帰ったロバートだが、秘密結社から刺客が送られてきた。連中は、ロバートが何か秘密を知っているのではと疑い、消してしまおうと企んだのだ。だが、刺客はあっさりと撃退されてしまう。実はロバートは、元は世界をまたに掛ける大泥棒であり、しかもセガール拳の使い手でもあったのだ!
秘密結社の行動はエスカレートし、ついにロバートの自宅が爆破され、妻が爆発に巻き込まれて死亡してしまった。
怒ったロバートは、一人で秘密結社を壊滅させてやろうと誓うのだった。



<見た後の個人的感想>
無敵超人セガール いやぁ、怪しい映画でした。大まかなストーリーには別段、怪しくなる要素は特に無いはずなんですが、何なんでしょう、この映画から発せられる圧倒的な怪しさは(笑)。
もう、この映画を“アクション映画”と言っていいのかどうかも分からないぐらいですね。強いて言えば“セガール映画”でしょうか(笑)。
問題は、ファンも納得のセガール映画とはまた違うという点ですね。
なぜ、そんな独特の映画になってしまったのか。その一番の理由は、監督のマイケル・オブロウィッツがハジけ過ぎたせいです。前の『撃鉄』でも監督をしていましたが、そこでも何か妙に凝った映像を撮ろうとしていましたが、今回はそれがほぼ暴走状態にまでなってましたね。
もう、全編、凝った映像、演出のオンパレードです。それも、最初の頃は「ああ、凝ってるな」と普通に見ていられますが、それが延々続くと、いい加減、見てて辛くなってきますね。映画が半分も過ぎないうちに「もういいから、落ち着いて撮ってくれ」とか思うようになってきました(笑)。
さらに、セガールが戦闘中に奇妙な構えを見せたり、襲ってくる敵の中に“刀を振り回す坊主”とか“ワイヤーワークで空を飛びながら襲ってくる猿拳(らしきもの)使い”なんてのが出て来て、怪しさを倍加させていました。

セガールと坊主の刀バトル また、今回のオブロウィッツ演出、ドラマ的な展開になりそうな場面になると、それをことごとくはしょってきます。特に、前半で牢屋に入れられたセガールが、先客のキングという男と会話をする場面なんか凄かったです。これからまさにキングが自分の生い立ちを語ろうと話を始めたまさにその時に、画面を暗転させて、次のシーンに変えてしまうんです。キングの立場はどうなるんだ(笑)。
まあ、“ドラマシーンを敢えて抜く”というのは、この映画のジャンルがアクション映画、いや、セガール映画である事を考えると妥当ともいえる手段ではあります。
ですが、その肝心のアクションシーンが思ったよりうまくないんですよね。前作『撃鉄』でのセガール拳の演出が中々良かったので期待してたんですが、何か振り付けが『撃鉄』より『奪還』に近い感じになってましたね。『奪還』ほど、“見せ方”に関しては悪くないんですが、どうも動きがセガールらしくないと感じる所が多かったです。
特に、敵のボスクラスの奴(前述の坊主と空飛ぶ猿拳使い)との戦闘中では、動きが目に見えて遅かったです。特に、坊主とは刀を使った戦いを見せるんですが、その迫力は下手したら『キル・ビル』と同程度かそれ以下という有り様でした。どうなってるんだ(これは、セガールの“老い”のせいなのか、“やる気”のせいなのか・笑)。

幸い、全てのアクションに迫力が無いわけではなく、敵を派手にぶっ飛ばし、ぶん投げるセガールの姿もしっかり出てきてくれます。
アクションシーンの最中にスロー処理が使われる箇所が結構多かったんですが、そのスローの使い方も悪くなかったですね。主に、“セガールが技をしかける時”と“敵が技をしかける時”、“敵がセガールに投げられた時”などでスローが用いられてました(確か)。特に、投げられた敵をスローで追うのにかなりこだわってたような感じがありましたね。


ストーリーは、復讐に燃える主人公が、一人で敵の組織を粉砕する、というもので、まさにセガールならではなものです。この大まかなストーリーを聞いただけでワクワクしてきますが、どうもその中身は想像してたものと違ってましたね。確かに、敵の組織がセガールに手も足も出ない様が描かれているんですが、何か違うという感じがするんですよね。
同じく、セガールが敵の組織に仕返しをする、『標的』シリーズ第一弾の(何だそりゃ・笑)『死の標的』と比べて、明らかに映画のレベルが低いです。多分、監督の人選を間違えなければ、ここまで怪しい映画にはならなかったと思うんですよね。
この『沈黙の標的』にも『死の標的』にも、刀バトルのシーンが出てくるんですが、その迫力の差はもう歴然としてましたからね。いくらセガールがあの頃より老いてるとはいえ、もっと、セガールならではな振り付けは出来なかったものなのか。
と言うか、『電撃』以降のセガール映画における、セガールへのアクション指導は明らかに間違った方向に進んでると思うんですけど、どうなんでしょう。せっかくの格闘技経験者なんですから、もっとリアル指向の振り付けをしてほしいです。


海外版DVDジャケット さて。この映画は、いよいよもってヤバい規模での公開となってしまいました。次の主演新作映画を普通の小規模公開にまで戻すにはここで外すわけにはいかないです。
そんな大事な時に、またえらく怪しい映画を用意してくれたもので(笑)。「各シーンに対してツッコミを入れながら見る」という鑑賞法にかなり適した作りでしたが、そういう映画はむしろビデオで見るもので、高い金を払って劇場で見るタイプの映画ではないですよね。
そんな訳で、次作『ベリー・オブ・ザ・ビースト(原題)』がビデオスルーになるんじゃないかと、かなり心配になってきました。一度そこまで落ちたら、復活はかなり厳しいでしょうからね。もう「セガール映画はビデオで十分な出来だ」というのが世間に広まり、“セガール映画”というブランドに力が無くなってしまったらもう終わりですからね。
後はもう、セガール人気の底力を信じる以外に無い、という状況に来てしまったようです。



<プログラム情報>
・定価400円。全2ページ。プログラムサイズ“大”
・イントロダクション+ストーリー1ページ
・解説+キャストプロフィール1ページ


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