レッドドラゴン


RED DRAGON
02年 アメリカ映画 125分

監督:ブレット・ラトナー
脚色:テッド・タリー
原作:トマス・ハリス
音楽:ダニー・エルフマン
出演:アンソニー・ホプキンス(ハンニバル・レクター)
    エドワード・ノートン(ウィル・グレアム)
    レイフ・ファインズ(フランシス・ダラハイド)
    ハーヴェイ・カイテル(ジャック・クロフォード)
    エミリー・ワトソン(リーバ・マクレーン)
    メアリ=ルイーズ・パーカー(モリー・グレアム)
    フィリップ・シーモア・ホフマン(フレディ・ラウンズ)
    アンソニー・ヒールド(チルトン博士)
    ケン・リュン(ロイド・ボウマン)
    フランキー・フェイソン(バーニー)
    タイラー・パトリック・ジョーンズ(ジョシュ・グレアム)




<あらすじ>
満月の夜、一家全員が惨殺されるという猟奇事件が起こった。そして事件は、次の満月の夜にも発生。FBIの懸命な捜査にも係わらず、犯人の手がかりは依然として掴むことが出来ない。
次の犯行が起こるであろう、満月の夜まで数日という時期、FBIのクロフォード捜査官は、ある人物に協力を仰ぎに行く。その人物とは、天才的な発想力で数々の難事件を解決してきたが、今はある事情でFBIを退職している、元捜査官のウィル・グレアム。
クロフォードの説得で、捜査の協力を決めたグレアム。だが、新たな証拠は発見したものの、犯人の特定に結びつく、決定的な手がかりはやはり発見できなかった。
そこでグレアムはある人物の元へ協力を仰ぎに向かうのだった・・・。

<見た後の個人的感想>
レクターシリーズ(いつの間にかそんなシリーズになってたんですね・笑)の3作目ですが、話自体は“1作目”に当たる、いわゆる「エピソード1」です。しかも、この話は過去にも一度映画化されているので、リメイクでもあるんですね。何だか複雑な立場な映画です(笑)。
そんな、難しい立場にいる映画ですが、その出来はもう素晴らしいものでした。個人的にはシリーズ最高傑作です(それもダントツの!)。原作も読んだ事あるんですが、個人的にはそれほど面白いものではありませんでした。映画の方も、「旧レッド・ドラゴン」=普通、「羊たちの沈黙」=面白い、「ハンニバル」=まあまあ面白い、という評価でした。なので、この映画も見る前はそんなに過度な期待はしていなかったんですが、見てみたらビックリの面白さ。まさかこのシリーズの最新作がこんな映画になるとは想像もつかなかったです。

何が面白いのかと言うと、展開がとっても「エンターテイメント的」なんです。猟奇殺人を扱った映画ですし、ストーリーも、犯人である狂人の心の闇を描いていたりするんですが、「羊〜」や「ハンニバル」のような、怖い、ホラー的な描き方とは違う感じなんです。なので、前作のファンにとっては、もしかしたら「軽い」と感じるかもしれません。
でも、この映画の監督は、過去に「ラッシュアワー」シリーズや、「ランナウェイ」などのアクション・コメディを撮っていたブレット・ラトナーです。だから、見る前から、今までのシリーズのような「重い」映画にはならないだろう事はある程度予想できる事ではありますけどね。
でも、サイコ・サスペンスだからといって、重ければいいってものじゃないです。それに、このジャンルの映画として最低限やらなければならない事はやっているわけですからね。ただ、その仕上げ方が、他のサイコ・サスペンスとは少々趣が異なっていた、といったところでしょうか。 ちなみにこの映画、ジャンル的にはれっきとしたサイコ・サスペンスで、決してアクション映画になってるわけではありません。

私にとって、このジャンルの映画で、見終わった後にここまでの充実感が得られたなんて初めてでしたからね。大抵は、事件は陰惨ですし、犯人も恐ろしい奴だったりと、見終わった後に嫌な感じが残ったりするものですが、この映画は見終わった後に嫌な感じどころか、「ああ、面白かったぁ!」といういい気分が残りました。
これは、ラトナー監督の「ラッシュアワー」シリーズを見終わった後にも感じたものでした。この人、どうも主演スターの魅せ方がうまいような気がしますね。そして当然、話の展開のさせ方もうまいようです。「ラッシュアワー」でも、ストーリーの中で、ジャッキーとクリス・タッカーの見せ場がうまく噛み合ってましたからね。
話の内容よりも、主演スター目当てで映画を見る場合が多い私にとって、この辺りが、見終わった後に充実感を感じられた理由なのかもしれません。
ただこの人、正直「恐怖演出」に関してはかなり問題があるっぽいんですが(ちょっと間違うとコメディに見えかねないシーンが多かった気がしました)、演技派スター達をうまく撮る事で全て帳消しに出来たような感はありましたね。

<キャストについて>
キャストの豪華さもシリーズ最高ですね。これに関しては誰も反対する人はいないでしょう。
レクターを演じる、お馴染みアンソニー・ホプキンスについては、もはや何も言う事は無いでしょう。何しろ、このシリーズの「顔」ですからね。まずはこの人がいなければ始まらない、それぐらいこの映画にとって重要な人物です。

そして、主人公のウィル・グレアムを演じるのが、あのエドワード・ノートン!
もう、アンソニー・ホプキンスとエドワード・ノートンが共演という時点で、すでにその映画が傑作になる事が保証されたようなものですね。
個人的なグレアムのイメージは、ノートンよりも、もう5歳ぐらい上だったんですが、もはやそんな事はどうでもいいですね。何しろ、グレアムは“レクターを逮捕した男”ですからね。この“ホプキンス=レクター”に対抗できる説得力のある俳優なんてそうはいないですから。

犯人役がレイフ・ファインズというのも、また原作のイメージからはかなり遠いですが(旧「レッド〜」ではトム・ヌーナンでしたからね・笑)、「原作のイメージと違う」なんて考えるのがバカらしくなるぐらい、見事にフランシス・ダラハイドを“創造”してしまいました。

<プログラムについて>
値段は600円。内容は、評論家による解説が2つ、主なキャスト&スタッフの紹介&フィルモグラフィー、プロダクションノート等。
キャスト紹介では、ホプキンスとノートンの二人にはそれぞれ1ページが割かれていて、インタビューも載っています。また、監督のラトナーのインタビューも有り(どれも短めですが)。
あと、「ハンニバル・レクターをめぐる<シリーズ事件ファイル>」というページがあり、今までのシリーズでレクターがやらかした事件の紹介がされてました。


<画像の下より、内容について(注・ネタバレ有り)>

     


この映画、原作にかなり忠実に作られてるっぽいですね。もう原作を読んでから結構経ってるので、記憶も曖昧なんですが、ダラハイドの心理描写以外はほとんど映像化したんじゃないですかね。
実のところ、原作をあまり楽しめなかった原因が、このダラハイドの心理描写がしつこいというところだったんですよね。まあ、本来はそこが見どころなんでしょうが、私はグレアムの捜査シーンの方に興味があったのに、下巻ではダラハイドが主役みたいな展開になってしまったので、読み進むのがかなり辛かったですね。
でも、今回の映画版ではそういう邪魔なところをうまく切ってくれたので、かなり見やすかったです。そういう所は切りつつ、上下巻の原作をほぼ忠実に映像化しただけあって、展開はかなり早めでしたね(多分カットされるだろうと思っていた、リーバがトラに触るシーンがちゃんとあったのはちょっと驚きでした)。でも、駆け足な感じはあまりなかったですけどね。人によっては、「この辺の心理描写はもっとじっくり描いてほしかった」みたいなのはあるかもしれないですけど。

日本プレミアでのインタビューで、監督のラトナーはこの映画を“怖い映画”ではなく、“エキサイティングな映画”だと言っていました。まさにその通りの、とってもエキサイティングな映画でしたね。
そう感じるのは、終盤の展開がアクション映画チックなのも一因でしょう。原作と旧「レッド〜」では、この終盤の展開がちょっと浮いたように見えたんですけど、今回は全然浮いて見えなかったですからね。もう、「これぞクライマックス!」と言わんばかりな盛り上げ方に、ただ興奮して見入るばかりでした。
屋敷の爆破シーンも大迫力でしたし、最後の犯人との対決シーンも見応えがありました。やっぱりこの監督、サスペンスよりもアクションに向いてるんでしょうね。サスペンスシーンの緊迫感よりも、アクションシーンの緊迫感の方が印象に残ってますからね。
そして、何よりもあのラストシーンですよ。シリーズを見てる人ならニヤリとせずにはいられない、心憎い演出です。ラストが良ければ、途中のささいな欠点なんか全部忘れさせてくれますからね。
あと、オープニングも良かったですね。「ハンニバル」っぽい感じで。何よりも、レクター逮捕という歴史的な瞬間を映像で見られたというのが嬉しいです。
しかし、グレアムは、オープニングで刺されたと思ったら、ラストでは撃たれてましたね。これで死なないんですから凄いです。

この映画、全体的に「ここは怖かった」というシーンがほとんど記憶に残ってないんですが、唯一印象に残った恐怖シーンは、ダラハイドが美術館に行って、絵を食べてしまうシーンです。行動があまりに異常すぎて、何か見ててめちゃくちゃ怖かったです。これを、レイフ・ファインズみたいな顔の人がやってるってところがまた怖いんですよね。これが、トム・ヌーナンみたいな顔の人がやったら、ただのホラーの入った怪人に見えそうなところですからね(まあ、それはそれで怖いですけど・笑)。
何気に、レイフ・ファインズのサイコ演技は全般で怖かったですね。実はこの人、他に「アベンジャーズ」でしか見た事が無かったので、「あの紳士がこんな狂人に!?」と、かなりの驚きがありました。むしろ、ホプキンス・レクターよりも、今回はファインズ・ダラハイドの方が恐ろしかったような気がします。

<エンディングについて>
エンドクレジットは、ダニー・エルフマンによるテーマ曲が流れましたね。多分、「悪」をイメージして作ったのであろう、禍々しい感じの名曲でした。
「スパイダーマン」以来、この人のファンなので、映画が始まる前に読んだパンフで、音楽がダニー・エルフマンと分かった時点で、もうエンド・クレジットでスコアを聞くのが楽しみでしたからね(笑)。
そう言えば、オープニングのクレジットでも同じテーマ曲を使ってましたが(アレンジは違うかもしれないですが)、私が見た映画館では、ここの音量が凄く高めだったんで、かなりビックリしましたね。しかも、画面には新聞に載ったレクターのアップとかが映ってたんで、何だか恐ろしい雰囲気でした。

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