
監督・共同制作:ゲイリー・フレダー
原作:ジョン・グリシャム
音楽:クリストファー・ヤング
出演:ジョン・キューザック(ニック・イースター)
レイチェル・ワイズ(マーリー)
ジーン・ハックマン(ランキン・フィッチ)
ダスティン・ホフマン(ウェンドール・ローア)
ブルース・マッギル(フレデリック・ハーキン判事)
ブルース・デイビソン(ダーウッド・ケーブル弁護士)
スタンリー・アンダーソン(グランド・ジャンクル)
ジョアンナ・ゴーイング(セレステ・ウッド)
ジェレミー・ピーブン(ローレンス・グリーン)
ニック・サーシー(ドイル)
マグリッテ・モレーウ(アマンダ・モンロー)
クリフ・カーティス(フランク・ヘレーラ)
ビル・ナン(ロニー・シェイバー)
コリー・イングリッシュ(リディア・ディーツ)
ゲイリー・バマン(ハーマン・グライムズ)
ルイス・ガスマン(ジェリー・フェルナンデス)
ローダ・グリフィス(リッキー・コールマン)
ダスティン・ホフマン、ジーン・ハックマン共演の法廷物映画という点だけで、どんな内容なのかもよく知らないまま期待をしていた映画ですが、当初の期待とはいい意味でも悪い意味でもなく、違う映画でしたね。
ハックマンとホフマン、このレベルの二人が法廷物で共演する場合、味方同士という事はまずないなとは思っていたので、どっちかが検事、どっちかが弁護士という役なのかと思っていました。で、ホフマンは確かに弁護士役でしたが、ハックマンの方は検事でも弁護士でもなく、ましてや判事でもなく、何と“陪審コンサルタント”という、これまで聞いたことも無い役柄での登場でした。
その仕事の内容は、陪審員を選ぶに当たって、「こちら側に有利な票を入れそうな人を選び出す」という専門の職業で、実際に存在する職業なんだそうです。何でも、かの有名なO・J・シンプソンの裁判において、OJの側に、かなり有能な陪審コンサルタントがついてたんだそうですね。
さらに映画では、陪審候補者全員の素性調査を密かに行い、行動学から心理学までを駆使して、対象のあらゆるデータを取ったうえで陪審員の選出をしているんです。本来は法廷内で弁護士の隣に座って、弁護士に助言をする、という立場の役職なんですが、この映画のハックマン演じる伝説の陪審コンサルタントのフィッチは、パソコンなどのマシーンの並ぶ“秘密の作戦室”にこもっていて、コンピューターから各陪審候補者のデータを出しつつ、法廷内の弁護士にはそこから隠しマイクを通じて指令を出しているんです。
これはもう、法廷で決着というレベルの話では無いですね。何しろ、こんなふうにして陪審員を選出してしまったら、もう、裁判が始まる前から勝負がついてしまってるようなものです。アメリカの法廷物映画では、よく「法廷に真の正義はあるのか?」みたいなテーマが語られたりしますが、この映画を見たら、「法廷に正義なんてものは絶対に無い。間違いない」とか思ってしまいます。
ですが、この映画でフィッチがやってるような事は、実際には実行不可能な事なんだそうですね。裁判が始まる前から陪審候補者を探す事も、法廷内に弁護士が隠しカメラ&マイクを装備して入って行く事もまず無理なんだそうです。ああ、良かった。
さて。そんな、「黒を白に変えてしまう」ような陪審コンサルタントの悪行に挑む奴が現れます。それが、“主人公なのに謎の男”という変わった立場で登場のジョンQザックです。
この、ジョンQ演じる謎の男ニックとフィッチとで、裁判の主導権の握り合い、みたいな展開になっていきます。裁判の主導権とは、すなわち、どれだけ陪審員達の評決を集められるかです。そしてこれがまた、検事と弁護士との法廷内での戦いとはまた違った面白さのある頭脳戦です。法廷物映画も数あれど、こんな切り口がまだあったとは驚きでしたね。
実は、全く宣伝をされていなかったので知らなかったんですが、この映画、原作は“ミスター・法廷物”こと、ジョン・グリシャムだったんですね。「このストーリーは、あの法廷ドラマのスペシャリストの手によるものなのか」と知った時は納得でしたね。
でも、どうして宣伝に「ジョン・グリシャム原作」というのを使わなかったんでしょうね?これまでのグリシャム原作映画ではかなり大きく扱ってた宣伝材料なのに。
映画のメインは、“法廷の裏”で行われるハックマンとジョンQのやり合いですが、ではホフマンは何をやっているのかと言うと、ちょっとしたカヤの外状態ではあるものの、“表の法廷シーン”において、正義の弁護士としてしっかり頑張っています。一癖も二癖もある登場人物達の中で、唯一、裏に何の秘密も無い、ストレートな正義の弁護士です。
本来、ホフマンクラスの人がやるような役ではないような気もするんですが、かと言って、あまり有名じゃない人にやられても、ただでさえ印象の薄い法廷シーンが、さらに陰が薄くなってしまいかねないので、やっぱり大物が脇を固めていてくれた方が良かったんでしょうね。
それに、扱う事件も、大きな社会問題となっている「銃規制」ですからね。こんなタイムリーなネタを扱ってる法廷シーンなんですから、おろそかにするわけにはいきません。むしろ、陪審コンサルタントの裏の暗躍とか抜きに、いつも通りの“表の法廷劇”メインで描いても面白そうな題材ですからね。
ちなみに、原作ではタバコと肺ガンによる事件なんだそうです。銃に変更になったのは、“『インサイダー』でタバコ問題を扱った”というのと、“ホフマンの要請”といったのが原因なんだそうです。
でも、これはいい変更だと思いますね。『ボウリング・フォー・コロンバイン』の後でタイムリーだというのもありますし、タバコと肺ガンに関しては、「吸う方が悪い」という考え方も出来ますからね。何しろ、「タバコは体に悪い」というのは誰もが知ってる大前提なのに、それを分かって吸ってるんですから。それで肺ガンで死んだからタバコ会社を訴えるというのもおかしな話だと思ってしまいます。
ですが、銃撃事件の被害者が銃メーカーを訴えるとなると、タバコの被害者がタバコ会社を訴えるのとは、被害者への同情度に大きな差が出ますからね。そうなると、ますます「何とかこの裁判に勝ってほしい!」という思いが強くなって、物語にもさらに引き込まれるというものです。
さて。法廷の表と裏でそれぞれ白熱した戦いが繰り広げられますが、もう一つ、トイレでも凄い戦いがあります。
それは、「実はこの映画がハックマンとホフマンの記念すべき初共演映画だ」というのに気付いた監督が急遽付け足した、「トイレで出くわした二人が、そこで言い争いをする」というシーンです。
何か、もう撮影も終わっていたのに、二人を改めて呼び出して撮影したのだとか。そんなオマケ的なシーンが、結果として映画の中でも屈指の迫力シーンになってしまうところが凄いです。さすがはベテラン演技派俳優の共演シーンだけの事はありますね。
ちなみに、主役の若い二人、ジョンQとレイチェル・ワイズにそれぞれ“アクションシーン”が用意されていたりと、この監督のエンターテイメント指向には頼もしいものを感じてしまいます。
レイチェル・ワイズの方は、家で暴漢に襲われるというシーンが出てくるんですが、何しろ、レイチェル・ワイズといえばエヴリンですからね。今更、暴漢ごときにやられるわけがありません(笑)。
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