ティアーズ・オブ・ザ・サン


巨大ウィリス

TEARS OF THE SUN
03年 アメリカ映画 118分

監督:アントワン・フークア
音楽:ハンス・ジマー
出演:ブルース・ウィリス(A.K.ウォーターズ大尉)
    モニカ・ベルッチ(リーナ・ケンドリックス)
    コール・ハウザー(レッド)
    イーモン・ウォーカー(ジー)
    ジョニー・メッスナー(レイク)
    ニック・チンランド(スロー)
    チャールズ・イングラム(シルク)
    ポール・フランシス(ドク)
    チャド・スミス(フリー)
    トム・スケリット(ロード大佐)
    フィオルナ・フラナガン(シスター・グレイス)
    マリック・ボーウェン(サディック大佐)
    サンミ・ロティビ(アーサー・アズーカ)




<あらすじ>
任務達成率100%を誇る、アメリカ海軍特殊部隊のエリート、ウォーターズ大尉に、「内戦下のナイジェリアから、アメリカ国籍を持つ女医リーナ・ケンドリックスを救出せよ」という任務がくだる。
頼れる7人の部下と共にナイジェリアへ向かうウォーターズ。そして、リーナのいる、森の中にある村に到着。あとはリーナを連れて軍の救出ヘリの来る合流地点に向かうのみだった。
だがリーナは、患者や難民を置いて自分一人だけが助けられる事を拒否する。そこでウォーターズは、合流地点まで歩いて行ける難民は一緒に連れて行ってもいいとウソを言い、ウォーターズ隊はリーナと複数の難民を連れてジャングルを行軍する事となる。

合流地点に着いたウォーターズは、何とか騙してリーナを先にヘリに乗せると、一緒に来た難民達をそのまま置き去りにしてヘリを飛び立たせてしまう。

これでもう任務は完了である。だがウォーターズは「本当にこれでいいのだろうか?」と思い悩んでいた。

そしてヘリは、リーナ達のいた村の上空にさしかかかった。だが、そこには驚くべき光景が広がっていた。なんと、ウォーターズ達が発った後、村に反乱軍が来たらしく、残った人々が全員虐殺されていたのだ。
このままでは、置いてきた難民達も反乱軍に追いつかれ、虐殺される事だろう。だが、自分の受けた任務は「女医の救出」であり、それ以外の行動をとれば命令違反となってしまう。

しかし、ウォーターズはヘリのパイロットにこう命令した。
「ヘリを戻せ」



<見た後の個人的感想>
いわゆる、お涙頂戴映画であり、戦意高揚でもある、と一部で言われている映画です。何しろ、製作時期がまたタイムリーでしたからね。
ですが、それで片付けるにはとっても勿体ない映画だと思いますね。と言うか、この映画を見て「アメリカ万歳映画だ」という感想が出る人は、きっとブルース・ウィリスが嫌いか興味の無い人でしょう。
ハッキリ言ってこの映画のブルース・ウィリス、過去最高の演技を見せてくれました。もう、カッコいい!あまりにカッコ良すぎる!
この映画は、お涙頂戴映画でも戦意高揚映画でもアメリカ軍万歳映画でもない、真の男の姿を描いた映画なのです!

また、ハリウッドでの戦争映画ではよく言われる事ですが、この映画も例によって、敵側はあくまでも敵という描写しかされません。しかも、残虐非道な悪魔として描かれています。
ですが、この映画では民族の紛争とか宗教の対立がテーマの映画じゃないんですから、敵側を平等に描写する必然性なんて全く無いですよね。あくまでも、「ウォーターズの目線での話」なんですから、難民を虐殺している敵兵士は残虐非道な悪魔以外の何者でもありません(背景がどうであれ)。
この映画は、「今目の前で起こっている事に対して、今の自分の信じる事を、今の自分で出来る事をする」というのを描いた映画なんだと思います。「でも、命令違反は良くない」という意見もあるでしょうが、元来ヒーローというものは、上からの命令を無視して、目前の悲劇に対して自分の出来る事をしてきたものですからね。

そして、その「自分が正しいと思う行動をする事」への葛藤というのもしっかり描かれているんですよね。ですが、セリフやエピソードではほとんど出て来ません。全てウィリスの演技で語られている事です。
特に、置いて来た難民の救出の為にヘリを引き返させる命令を下す前のウィリスの表情は、ほんと凄かった。下手な言葉で表されるよりも何倍も重みが感じられます。
また、今、自分のとろうとしている行動が本当に正しい事なのかも分からない、という立場にいる所もミソですね。

まあとにかく、政治的な事を考えずに、普通に個人の人間のドラマとして見れば凄く熱く、感動的な映画です。

また、ウォーターズ隊の戦闘シーンでの動きがとってもプロっぽい感じで、見ていて感心してしまうほどです。そして、そのチームワークも素晴らしい。何か、『SWAT』に足りなかったものが全て詰まってる感じの戦闘シーンでした。まあ、『SWAT』にはあった娯楽性とノリノリの音楽はこの映画には無かったですが、その要素が無いのが欠点にはなってませんからね。
何でも、アクションシーンにおけるウォーターズ隊の動きとか使用する銃器関連とか、かなりこだわった作りになってるようで、その手の事に詳しい人にとってもかなり見応えのあるものになっているのだとか(例によって、私はそういうのに詳しくないので、聞いた話でしかないんですが)。
でも、素人が見ても、「プロっぽい動きだ」感じさせるものになってましたからね。

ちなみに、音楽はまるで『ブラックホーク・ダウン』の流用かと思うぐらい似た感じの曲でしたね(音楽担当は『ブラック〜』と同じハンス・ジマー)。



<キャストについて>
主演のブルース・ウィリスは、『マーシャル・ロー』では将軍の役をやっていましたが、それが自分的にはイマイチだった為、見る前は今回の軍人役に多少の不安があったりしました。ですが、いやぁ、まさかここまで大尉役が様になる男だったとは、お見それしました。
やっぱり、『マーシャル・ロー』の時と違って、「正義の味方だ」というのが、ここまで印象を変えさせているんでしょうかね。やっぱり、ヒーロー役のよく似合う人です。
久しぶりのアクションの要素のある映画の主演ですが、あまり派手なアクションは見せません。まあ、もともと動きで観客を魅了するタイプの人ではありませんでしたからね。なので、歳をとって体が以前より動かなくなってきていたとしても、アクションスターとして致命的という状況にはまだならないと思います。問題は、本人がアクション映画に出たがってない事でしょうか(笑)。ほんと、勿体ない事です・・・。

共演のモニカ・ベルッチですが、見る前は、この人を救出するのが最初の任務だっただけに、もっと積極的に話に絡んでくるのかと思ってたんですが、あくまでも「救出対象」という感じで、他の難民より出番が多いだけ、という感じでしたね。もし、これがジェームズ・キャロメンが監督作だったら、きっとこの人も銃を撃つシーンが出たりしたんでしょうね。
『リローデッド』では高価で綺麗な衣装を身に纏ってましたが、この映画では、衣装から顔まで始終泥だらけでしたね。まあ、よくそんな映画に出たものです(後悔してなければいいんですが・笑)。



<プログラムについて>
定価600円。内容はかなり平均的な、可も無く不可も無いようなものです。評論家による映画の解説が、この映画の内容理解を助ける手助けになるような、気の利いた内容でした。

ですが、1ページだけ、何か妙なページがあります。何故か、アイドルの乙葉嬢のインタビューが載ってるんです。もちろん、乙葉本人に関する事ではなく、映画を見た感想についてのインタビューです。
最初見た時は「なんじゃこりゃ!?」とか思ったんですが、意外にしっかりとした感想を言ってました。もう、この映画を見た後に言う感想としては、模範解答みたいな内容でした。本当に本人が言ったものなのだとしたら、大したものです(下手したら、私よりも内容を理解してるかもしれない・笑)。
ですが、「何故、乙葉?」という謎は残されたままですが・・・(宣伝にも関わって無かったですよねぇ・・・?)。



<画像の下より、ネタバレ有りの感想>

ウォーターズ大尉 ウォーターズ隊 救出対象



任務遂行率100%を誇るウォーターズ大尉が、なぜ命令違反をして難民を助けに戻ったのか。その確たる理由が劇中では語られないのですが、映画を見ていれば、そしてウィリスの演技を見ていればだいたいの想像は出来る事ですよね。例え、それが正解じゃないにしても。
私が映画を見ていて思ったのは、歴戦の兵士ではあるものの、実際に虐殺の現場に立ち合った経験は無かったせいなんだと思います。まあその他にも見ている間はウィリスの表情や行動からいろいろ考えていたんですが、細かい事は忘れてしまいました(笑)。
ウォーターズとその部下達は歴戦の勇士達です。その自分達の力をもってすれば、少なくとも、今一緒にいる数名の難民の命を助ける事が出来るかもしれない。では、なぜそんな事をするのか?それは、それが正しい事だと思ったからです。
ウォーターズ含め、部下達にとっても迷いや葛藤があった事と思いますが、多分、中盤の虐殺されてる村人達を助けに入るシーン辺りから、上の方で書いた「今、自分に出来る事をやる」という考えに達したんじゃないかと思います。あの場にいれば、ああいう行動をとる事が正しい事に思えるはずでしょうからね。
それに、あくまでも「命令順守」にこだわるような奴は、きっとウォーターズ隊には入れないんでしょう。いても、クビにされるか、ウォーターズに感化されるかのどちらかになると思います(後者の方があり得そう)。
終盤に、仲間に意志の確認をするシーンがありますが、あそこでいかにウォーターズ隊が結束しているのかがよく分かりますよね。そう言えば、『アルマゲドン』でも似たようなシーンがありましたが、あちらは嫌々ついて行った人も中にはいましたけど、こちらはちゃんと自分の意思でウォーターズについて行ったようでしたね。さすが軍人です。

エンドクレジットの直前に、「善が行動しなければ、悪が勝利する」という言葉が出て来ますが、これがまさにこの映画のテーマなんでしょうね。「世界平和につながる行動」というわけではないし、もしかしたらあまり意味の無い行動かもしれない。でも、悪に勝利させない為には、善が積極的に動いていかないといけない。その「行動する善」というものがいかにかっこいいのかを、この映画ではこれでもかと見せてくれましたね。
ですが、素晴らしいテーマを見せてくれはしたものの、私はブルース・ウィリスでもウォーターズ大尉でもない普通の男なので、そんなテーマの映画を見たところで、これからもセコく生きていく事に変わりはないですけどね・・・(笑)。

ところで、ウォーターズにとって、リーナはどういう存在なのか?というのは、実は見ていてよく分かりませんでした。リーナが女だから、というのは関係あるんでしょうかね。私は何となく、救出対象の医者がハゲオヤジであったとしても、ウォーターズは難民達を助けに戻ったような気がするんですよね。だって、そういう男ですよね、ウォーターズって。
難民を助けようとしたのは、リーナの為だ、という見方も出来ると思うんですが、私はなんとなく、「自分の為」とか、そんなような事で助ける事にしたんじゃないかと思います。実は、そうであってほしいという思いもあるんですが(笑)。だって、そういうヒーロー像の方がカッコいいですからね。でも、動機の一つにリーナの存在があった、というのは充分考えられる事ですけどね。

それにしても、ウォーターズ本人が、命令違反をした理由について答えた「俺にもよくわからん」というのは、いいセリフでしたねぇ。そのおかげでこんなにも考える事が出て来ましたし(笑)。
それに、もし私がウォーターズの立場でも(しかも、ウォーターズと同じぐらいの戦闘力と精神力を持っていると仮定して・笑)同じ事を言ったような気がします。と言うか、多分、本当に自分でもなぜなのかよく分かってなかったんでしょうね。ただ漠然と、そうする事が必要なのではないか、と思っていたとか。第一、人助けに理由なんていらないですからね、本来は。

さて、中盤では、襲撃されている村に助けに割って入るという、まさに英雄的行動をウォーターズ隊はやるわけですが、いやぁ、いいですねぇ、こういう英雄的行動って。ヒーローが誰かを助ける為に活躍するシーンとか大好きですからね。
虐殺のシーンはほんと酷いですが、それだけに見てる方もウォーターズ隊に「頑張れ!」とか「殺せ!」とか思って見てしまうんですよね。何か、ドキュメンタリー映像とかで、無抵抗の人がむごたらしく殺される様をたまに見たりしますが(この映画の冒頭でも出て来た)、「もし、この場にヒーローが居合わせていたら!」とは誰もが考える事でしょう(それとも、私だけか?)。それが実現してるシーンなので、何か溜飲が下げられるような思いがありましたね。ただ、結局救出できたのは数人程度で、ほぼ手遅れ状態ではあったんですけどね。
でも、無抵抗の弱者をむごたらしく殺していた悪魔に正義の鉄槌を下すというこのシーンは見てて燃えましたねぇ。


ところで、ジャングルを行軍するウォーターズ隊と難民ですが、敵達が後方のどれぐらいの位置に、どれぐらいの規模で迫って来ているのか、というのが、ウォーターズ側はコンピューター(ノートパソコンみたいなやつ)で知ることが出来るってのは驚きでしたね。戦争映画でこんなの初めて見ましたよ。凄いなぁ、ハイテクは。



<エンディングについて>
エンディングテーマは、かなりアフリカンな感じのものでしたね(曖昧)。
せっかく音楽がハンス・ジマーなんだから、『ザ・ロック』みたいな熱いテーマ曲を期待してしまうところですが、この映画にはこういうアフリカの歌みたいなやつの方が合ってるような気もしますね。



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