003
僕は、けっして容姿の整ったほうではなかった。
むしろ、時たま鏡を見ると、そこに映る自分がひどく醜く思えることもあった。
僕みたいな人間を愛してくれる人がいるとしたら、それは大変な物好きだろうと思っていた。
でも、僕はいつだって愛されたかった。たとえ、どんな僕であろうと。
僕が、あの人ほど容姿が整っていたなら、なんて、何度思ったことだろう。
けれど僕はいつだって僕のままだった。他人にはなれない。
どんなに望んだって、自分からは逃げることなんて出来なかった。
僕は僕でしかなかった。
でも、冷静に考えれば、それで良かったのだと思う。
僕は、昔からひどく自惚れやだったから。
あの人なら僕のことを好きになってくれるんじゃないか、などと自惚れた考えが頭を掠めるのは僕にとってありふれたことだった。
そのたび、僕は自分に言い聞かせる。
―バカか、おまえ。自分がどれだけ嫌なやつか知ってるだろ?そんな僕を好きになってくれるひとがいるか?いや、いない。いるもんか。そうさ、いない。い、な、い。―
そうすることで、僕は自分をコントロールできる。
かといって、これがいつも有効なわけではなかった。
なぜなら、僕は、僕自身のことが好きだったからだ。
客観的に見れば多少悪いところはあろうと、僕にしてみれば大体のところは気に入っていた。
他の人にしてみれば僕は嫌なやつかもしれない。
でも、僕が”そう”じゃないなんて、想像もつかないし、絶対に嫌だ。
そんな風に、僕は自分が好きだったし、そのことにも誇りを持っていた。
だから、自分を好きになってくれる人なんていない、と思いながらも、どこかで「いや、でもどこかには必ずいる」と思っていた。
そんな僕には、きっと”ブサイク”は必要だったんだろう。
いつもの<自惚れ>が始まっても、鏡をみるとはっと己の愚かさを痛感できる。
それに、僕の胴体に僕のじゃない、端麗な顔がくっついていることを想像するとぞっとする。
そんなことを含めて考えると、僕は、僕の顔でよかったと思う。
でも、もしかしたらこれも、自分に対しての嘘なのかもしれない。
ふと思ったのは、今日のことだ。
あれ?なんで僕はこんなにビクビクしているんだろう?
一度疑問に思うと、つらつらと疑問がわいてくる。
そうさ、僕はブサイクだ。自信を持っていえる。僕は、ブサイクだ。
だが、それがどうしたんだ?そんなことでビクビクしてるのか?
そんな、今更どうしようもないものを理由に?それが僕の運命だと言えるのに?
世界ってこんなに広いんだぜ?
なのに僕を”評価”してくれない人に、どうして心をさかねばならないんだ?
そうだ、僕は僕なりの”正しさ”に生きればいい。
愛してくれるとか、くれないとか、そんなのを気にする必要なんてないんだ。
僕はただ、僕の生き方を貫けばいい。
僕を愛してくれる人が本当にいるのなら、そのうち引き寄せられるさ。
僕の人生を愛してくれる人を見つけるために、僕は僕の人生を突き通そう。
そう、僕が誇りに思える自分を目指して、僕自身のことを信じて、進んでいけばいい。
それだけでいい。
それだけで、僕の人生は意味を成す。