お酒- "sakura"sidestory2 -

「…暇だな」
聞仲は神界にある自分の家の中で呟いた。
いつの間にか隣の家に住むようになった四聖は今日も聞仲の家に遊びにきている。
そして勝手に5人分のお茶を淹れてくつろいでいた。
「そうですねぇ。最近は特に仕事もないみたいですし…」
四聖の1人王魔がぽつりと呟く。
他の3人もこくりと頷く。

「聞仲さん。いる?」
のんびりとお茶をすすっていた最中、意外な人物が訪ねてきたことに一瞬空気が固まる。
もっとも、その人物を見たことがない四聖たちは普段通りだったが。
おとなしめにノックされた扉を高友乾が開く。
そこに立っていたのは頭の上に天使のような輪を載せた少年だった。
「ふ…普賢真人」
迎え入れられた普賢は、聞仲に向けて穏やかな笑顔を向けていた。
「こんにちは聞仲さん。今日はあなたをお誘いに来たんだ」
「聞仲様、知り合いですか?」
一瞬普賢に見とれた四聖達が聞仲に尋ねる。
「知り合いも何も…そいつは十二仙の一人、普賢真人だ」
王魔・高友乾・李興覇が瞬時に固まった。
楊森は冷静にお茶をすすっている。
「そんな事は関係ないじゃない。それよりも面白い話を聞いたんだ」
「どうせくだらん事だろう」
「そんなの聞いてみないと判らないでしょう?」
固まっている3人を余所に普賢は勝手に椅子を引き出して腰を降ろす。
楊森がお茶を入れる為に席を立つ。
「さっき元始様に聞いた話、今蓬莱島で花見が行なわれているんだって」
「それがどうした」
「言ったでしょ?貴方を誘いに来たんだって」
「遠慮しておく」
「…お茶だ」
楊森がお茶を入れた湯飲みを普賢の前に置いた。
先程固まった3人がはっと我に返っていきり立つ。
「そうですよ聞仲様!崑崙のやつなんかの誘いに乗る必要なんてないです!!」
王魔が叫ぶ。
「大体何で勝手に上がりこんでお茶までもらってるんだよ!楊森!! こんな奴にお茶なんて出す必要なんて…」
「僕らにはもう崑崙もキンゴウも関係ないんじゃない?今の仙人界だってそうでしょ」
自分に指を指しながら叱咤する李興覇と王魔に対し、冷静に答える普賢。
「聞仲様の客だ。お茶をだすのは当然だろう」
楊森が自分の席に座りなおして話す。
「そ、それはそうだが…」
高友乾も多少おどおどしながら席に戻る。
聞仲はいきり立つ3人を抑えて口を開く。
「話を戻そう。確かに今では崑崙もキンゴウも関係はない。 だが、関係無いからと言ってお前たちと馴れ合うつもりはない」
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「そう…」
あっさりと引いた普賢に少し戸惑ったが、いつも通り冷静な表情でお茶をすする。
「他の人だって来るんだよ?黄一家だって…」
少し考えて、もう一度口を開く。
「飛虎が参加するからといって私が参加する理由にはならん」
目を閉じて、腕を組む聞仲。
「そう…どうしても一緒に来てもらえないんだ…」
「そうだ!お前たちと馴れ合うなんてごめんなのさ!!わかったらさっさと…」
言い終えようとした王魔の血の気が一気に引いた。
同時に他の3人も彼と同様に絶句した。
そんな四聖の様子を感じ取った聞仲は目を開けて普賢を見た。
「…………」
丸い玉を持ってぶつぶつと呟く普賢を見て、聞仲の顔から血の気が引く。
「空気中の水素を集めて結合し……する。16メートル以内から 僕の生体反応が消えたらこれを周囲10メートルの範囲にオートで発動…」
玉を机の上に置いて席を立ち、外に出た。
「じゃあお邪魔したね。僕はこれで失礼するよ」
その顔に天使の笑顔を浮べながら扉を閉めて立ち去ろうとする。

『待て待て待て待てぇぇぇぇぇ!!!!!!!』
5人の叫び声が一斉に普賢の耳に届く。
聞仲が顔面蒼白で外にでてきて普賢の細い肩を掴んだ。
「…その誘い。喜んで受けさせて頂こう…」
引きつった笑顔を浮べながら普賢に意を伝えた。
「ありがとう」
対して普賢は…その顔にまた天使の微笑を浮べてにこりと笑った。

「これだから崑崙のやつは嫌いなんだ…」
4人で丸い玉を前に机を盾にして怯えながら、高友乾が半泣きで呟いた。

「おぉ〜此れは珍しい。聞仲ではないか」
すでに大騒ぎとなっている花見会場で、 他の神々とは一足送れて到着した普賢と聞仲の姿を見つけて太公望が声を上げる。
四聖は留守番として神界に残った。
「それに普賢師弟…確かに珍しい組み合わせですね」
太公望の隣に陣取っていた楊ゼンも二人に気付いて感想を漏らす。
「たまにはいいでしょ。ねぇ望ちゃん」
「確かにそうだのう。しかしまた、よく誘いに答えたものだなあやつも」
お猪口を手にしながら自分の横に座り込んだ友人に話し掛ける。
「平和な話し合いの結果だよ」
「…あれのどこが平和だ」
にっこりと笑った普賢の横で、聞仲がこっそりと呟く。
その声を聴き取った太公望はなんとなく話し合いの状況の予測がついて苦笑いを浮べた。
「ま…まあ、折角来たのだ。ほれ酒でも呑むか?」
近くに置いてあったお猪口と徳利を聞仲に差し出す。
「馴れ合いに来た訳ではない。遠慮して…」
「もしかしてお酒も呑めないの?聞仲ともあろう人が?」
普賢が囁いた。その言葉は聞仲の癇に触れたのか、彼の眉がぴくりと動いた。
「侮るな。これでも飛虎と何度も酒を飲み明かしていた程だ。酒には自信が有る」
「じゃあ、勝負してみようか。 そうだ、何も無いのもつまらないから負けた方が相手の言う事を一つ聞くって言うのはどう?」
「望む所だ」
差し出されたお猪口を太公望の手から奪い取る聞仲。
「ちょ…ちょい待て聞仲!!こやつを相手にそんな勝負をしたら…」
「黙れ太公望!普賢真人、仙界大戦の時と同じ様に力量の差というものを教えてやろう。 後で後悔するがいい」
「そんなのやってみなくちゃ判らないでしょ?」
いいながら、太公望がもう片方の手で持っていた徳利をそっと取り、 互いの器に酒を注ぐ。
「おい普賢!」
太公望が普賢を止める。
「いいじゃない望ちゃん。折角来たんだから楽しまないとね」
「そういうことではなくてだな!!」
横で普賢を止めようとする太公望を余所に、聞仲がお猪口を手に構える。
「二言はないな」
「もちろん。」
かくして、普賢と聞仲の酒の呑み比べが始まった。

「……哀れ聞仲。目測を誤ったのう」
始まったばかりの呑み比べを見物しながら、太公望がそっと呟いた。

「聞仲さんはもうギブアップかな?僕はまだまだいけるよ。ねぇ望ちゃん」
周りに幾つかの酒瓶を転がしても、今だ酔いの気配を見せない普賢。
「お主の底はどこにあるのだ…」
一向に酔う気配のない友人と隣で顔を真っ青にしている聞仲を見比べて、 太公望は密かに聞仲に同情を送る。
太公望の隣に腰を降ろしていた楊ゼンもまた、聞仲と同じように顔を蒼くして横になっていた。
「二人とも酒に弱くはないだろうに…」
彼とだけは酒の飲み比べ勝負をしてはならない。
そう改めて思った太公望だった。
「僕の勝ちだね。じゃあ聞仲さん…」
告げられた罰ゲームに、呑み比べ勝負を見ていた誰もが同じ事を思った。

―――天使のお面を被った小悪魔―――

この時の事がショックとなり、この後暫らく聞仲は家から出て来なかったと言う。

-了-


楊太関連内にある"桜"の外伝第2弾。

文愉さんからのお願いで聞←普のつもりで(−−;
なにやら四聖が出てきたので疲れました。
何にって…漢字変換に。
漢字があっさりと出てきたのは王魔と楊森だけですよ。
李興覇なんて他のサイト様まで調べに行ってきました。

因みに聞仲さんが普賢に何を頼まれたかはご自由にお考え下さい(笑)
さてさて次の外伝では十二仙が登場ですv

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