20 わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ

 

 

 

 いつものように関弓は人で賑わい、活気ある声と笑顔で満ちていた。
 漉水は豊かな水量を蓄え、澄んだ流れで田畑を潤し、生命力溢れた濃い緑を輝かせている。
 頬を撫でる気持ちの良い風。遠くから聞こえるのは鳶だろうか。
 たま に跨った六太は、目に映るそれらの景色を、あるがままに受け止めた。










----------雁は、綺麗だ。











「おや、珍しい。お二人ともおいでとは」
 長い時間をかけて、ゆったりと国中を巡った後、玄英宮に戻った六太を目留めた朱衡が、殆ど挨拶のように揶揄する。
「尚隆、いるのか?」
「ええ、内宮の方に。姿があるうちに少しでも働いて戴こうと、たっぷり書類を渡しておきました。何しろ、肝心な時に捕まらない、裁可が必要な書類は、溜まる一方ですからねぇ。……台輔?」
 どこかおかしい麒麟の様子に、朱衡は首を傾げた。
「主上と喧嘩でもなさったんですか?」
「朱衡…お前」
「はい?」
「…いや…ま、いいか。尚隆は房室に居るんだな?」












 回廊を抜け、内殿に入った六太は、朱衡の言う通り机仕事に精を出している男の珍しい姿に、やや驚きながらも、ぶっきらぼうに切り出した。
「関弓を一回りしてきた」
「ほう。…で?」
「別に。普通。どこも何とも、変わりない」
 そういって、榻にすとんと腰を下ろし、背を向けたまま書類に目を通す、己の主を見つめた。
「…陽子とのことは、バレてない」
 ふ、と漏れた笑い声と共に、尚隆は口を開いた。
「なんだ?お前まさか、城中のやつらに聞いて廻ったのか?」
 そんなこと…と、呟き、六太は顔を顰める。
「だって…あいつらに知れたら、大騒ぎだろう?」
 声を落す。
「知ってるのは俺だけだ」
 ゆっくりと振りかえった尚隆は、穏やかな表情で六太を見た。
「天鋼に「王同士の野合を禁ずる」と、書いてあるか?」
 直截な科白に、六太はたじろいだ。
「心配するな。陽子とのことで、国を蔑ろにはせん。それは陽子も同じだろう。お互い、麒麟に失道されては敵わんしな」
「…尚隆」
「後は、お前の気持ち次第だ」
「俺ひとりに担わせるのか!?」
「……陽子が嫌か?」
「そうじゃない!そうじゃない…けど」
 判っている。尚隆はずっと、一緒に歩いて行ける相手が現われるのを待っていた。
 麒麟じゃなく、部下じゃなく、胎果で、自分と同じ時を生き、心を許して眠れる、人間の女を。
「…陽子は、ただの女じゃない。しょっちゅう会えないぞ。それでいいのか?」
「俺たちに、時間は問題じゃないだろう。目の前にあるのは永遠に続く綱、一本だ」
 国が滅んでも麒麟には生き長らえる術がある。だが、王には選択肢がない。
「…判った」
 そういって、六太は立ち上がる。
「おい、せっかく来たんだ、仕事、手伝っていけ」
「ひとりでやんな。俺はしばらく拗ねてる」
 出掛けに尚隆は、静かに言った。
「お前を排除してる訳じゃない。お前は俺の…半身なんだろう?」












 気分が悪いのは、失道なんかじゃない。
 俺の我侭。
 牀榻で嗚咽する麒麟を、女怪は痛々しく見守った。









2002.9.7 了








 だーーーーっ、やっぱこりゃ失敗っ(><)。
 これじゃ、何か尚隆×六太だし(爆)、陽子出てきてないし、ぐるぐるしてるのは六太だし〜、そもそも、歌の意味と全然別物だし〜っ(ぎゃははは)。
 根がノーテンキな私は、延陽の前に立ちはだかる壁は、「遠距離恋愛」だけだと思っております。王同士の野合禁止令もなさそうだし^_^;、そりゃ、両国の官吏は驚くでしょうけど、これは事後承諾で行けば、何とか乗り越えられるんじゃないかなートカ(向こう三十年くらいは秘密交際で/大笑)。強いて考えられるのは、六太の気持ち。けど六太が難色を示すパターンって、いわば「新しいお母さんの出現に、お父さんを取られたくない子供が拗ねる図」ではないかと。

 浩陽、延陽、どっちで書こうかと思い、単に距離的な選択で延陽にしてみたんですが、私が書くと、浩瀚だろーが延王だろーが「会いたくても会えない」などと、殊勝にぐるぐるしてくれない!のです(爆笑)。万難を廃してガンガン会いにいっちゃう、とほー。性格出ますねぇ^^;。
 この歌って、皇后と不倫関係になったヤツの開き直りの歌(おいおい)なんですよね。「バレちまったからにゃあ、遠慮しないでガンガン密会したいぜ」的な。…で、じゃあもし、これを陽子中心でストレートに書くと、とんでもない三角関係になりそうだと、ふと気がつきました(笑)。
----------誰か、書きませんvv?(ははは…)


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