誰かにとっての
ぎこちなく髪に触れ、危ない手つきで簪を挿す。
慣れていないその手付きに、女は嬉しそうに微笑んだ。
男もまた満足そうに微笑んだ。
そうして、どちらからともなくゆっくりと唇を合わせ、また微笑み合う。
その自分から見れば他愛無い行為がとても羨ましかった。
祥瓊はその二人の男女から見られないよう小さな身体を茂みに隠し、こっそりと覗いていた。
この場面を見つけたのは偶然だった。
遊び相手の少女達から外れ、庭を散策したくなったのもほんの気紛れだった。
当てもなくブラブラと歩いていた時、まるで人目を避けようと辺りを見ながら別々にやってきた二人に好奇心が起きたのだ。茂みに隠れ、そうして、二人を観察していた。
今では見なければ良かったと思った。
この幸せな二人を見たくなかった。
男の方は厳つい強面をしていたが、女の顔を見るとそれは不思議に思う位、笑み崩れていた。
女もまた、それほどの美貌の持ち主ではない。十人の女がいたら、それこそ埋没してしまう位の顔立ちだ。
だが、二人にとって互いが一番と言うかのように微笑み合い、そして、幸せそうに囁き合っている。
祥瓊とて、簪だの、綺麗な帯だの、様々な品を、山のように持ち、そして、献上品として受け取っている。
色鮮やかなその品々は、祥瓊の為に誂えられ、出番を今か今かと待っている。
そして、男が女の髪に飾った簪は、祥瓊の目から見れば、それほど似合っていると思えなかったし、高価な品とも思えなかった。祥瓊ならば、歯牙にもかけないその品を、女は大切な宝物として認識している。それでも、そのたいした事のないその簪が無性に羨ましかった。
「わたくしだって……」
思わず祥瓊は呟いてしまった。
そう、祥瓊だって、望めばどんな品だって手に入る。
けれど、この女のように一人の女として、男から貰えるだろうか。
芳国の宝玉としてでなく、一人の女として誰か見てくれるだろうか。
お父様がお母様をご覧になるその眼差しのように、熱く見詰めてくれるだろうか。
ただ、一人の男だけで良い。
いや。その男でなくては駄目なのだ。
祥瓊の白く柔らかな頬を涙が伝う。
いつの日か、こうやって飾りを髪に飾ってくれるだろうか。
幸せそうに微笑んでくれるだろうか。
止まらない涙を袖口で押さえながら祥瓊は小さく唇を噛んだ。
2003.5.18 UP
◆明美さまのお言葉より◆ オフ会では、心の奥底にズキュンとくる祥瓊をありがとうございました。
はらはらと真珠のような涙を零す美公主が、
後々お酒の勢いをかりて、男の貞操(?)を奪うようになるとは……。
未だに信じられません。書いておいて何ですが。
あわわわわ(@@
こちらこそ、無理難題をお聞き入れ下さってありがとうございます!!vv
うひひひ…涙を流す美少女vv(←誰かに撃ち殺されそうな不謹慎発言^^;)
鷹隼宮時代の祥瓊…つーことは、これってつまり
「永遠に少女でありつつげる」少女の嘆きなんですよね…。ほろり。
しかし、覗きはイカンよ、公主(笑)。
明美さんを唸らせてしまったお詫びに、レスSSでも書ければと思ったのですが、
やはり「嘆く美少女」は難しかった(←コラ)。
ので、殴り描きで申し訳ないっスが、泣きべそ公主を描いてみました^^;。うふv。
明美さまvv、ありがとうございました〜!!vv
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