「私は――いたらない、―――本当にいたらない」
冬の凍てつくような寒さの中、人に忘れ去られたようなひっそりとした四阿で両手で顔を覆い椅子にうずくまる陽子の姿があった。通常の彼女からは想像も出来ない様子に慶国冢宰である浩瀚はやさしく声をかけた。
「如何なさいましたか?皆、探しておりましたよ」
「………」
「あの海客の少女のことを悔やんでおいでか」
ビクっと反応し陽子は顔を上げた。
赤楽3年、泰麒が蓬莱からこちらの世界に戻った時に大きな蝕があった。それに偶然巻き込まれた少女がいた。
「な、何?ここは一体何処なの?こんな場所知らないっ!」
何も分からずただ呆然としていた少女に近付く男がいた。
「※※※※※※?」男は少女に声を掛けた。
「えっ?何?何を言ってるのかわかんないよっ!」
男は少女の腕を掴み強引に引っ張り歩き出した。
「いやっ、何処に連れて行くの!?」
「※※※※!」
男は少女を緑の色の柱が鮮やかな建物に連れて行った。そう、男は少女を女郎宿に売った。
人のよさそうな老婆に襟ぐりが開いた艶やかな色の着物を着せられる。
「待って、ここは一体何処なんですか?」
老婆はにやりと笑って牀榻に少女を閉じ込めた。
中には目をギラつかせた男がいた。少女は初めて気付かされた。自分が売られたということに。
「い、いやっ、」
力強い男に無理矢理組み敷かれ艶やかな着物の胸元を大きく開けられ少女は犯された。
―――生きていくために仕方なく少女は客を取らされた。
しかも少女は海客であったため不幸にも妊娠してしまった。日毎に大きくなる腹を気味悪がられ女郎宿さえも追い出された。
そして放浪を続ける間に無理が祟ったのか流産してしまった。
瘍医からの知らせにより海客であることが判明し漸く陽子の耳に入った。
陽子はすぐにでも金波宮で保護しようとしたが瘍医の話によるととても少女を動かせる状態ではないというので鈴に様子を見にいってもらった。しかし少女は看病の甲斐も無く儚くなってしまった。
「私が彼女だったかも知れないんだ」
「主上…」
「景麒に連れて来られて巧で海客だと役人に捕らえられた。その後に妖魔に襲われて…彷徨った挙句女郎宿に売られそうになった」
「主上…そのお話を伺うと胸が痛くなります。何故私がその時お傍に居られなかったのか」
浩瀚は力強く陽子を抱きしめた。
「主上をそのような目に遭わせて申し訳なく思います」
「…浩瀚」
「私が麒麟であれば絶対にお傍を離れることは無かったでしょう。今更ですが台輔をお恨み申します」
「浩瀚…浩瀚……」
浩瀚の言葉に陽子は翠玉の瞳を潤わせた。涙は止め処なく流れ落ち浩瀚の胸を濡らした。
「早く、もっと早く気付いていれば…助けられたかも知れなかったのに……」
浩瀚はやさしく陽子の髪を撫で涙を唇で拭った。
「主上の所為ではございません」
陽子の頬にそっと口付ける。
「でも、浩瀚」
「…泰麒が戻られ内宰の謀反もあり、我々も滞った執務に忙殺されていたのですから」
「でも私が、私が泰麒を呼び戻さなければこんなことには」
「では戴はどうなりましたか?李斎は?」
「………」
陽子からは嗚咽が漏れた。
「物事には良い面もあれば悪い面もございます」
「…鈴が言ってた。彼女の最後の言葉を…『お母さん、帰りたい』って」
陽子は咽び泣いた。
「今日はめいいっぱい彼女の為に泣いてお上げなさい。それで十分です」
浩瀚は陽子の膝裏を抱え上げた。
「臥室へお連れ致しましょう。御身体が冷えております」
陽子は浩瀚の胸の中で泣き続けそのまま眠りに落ちた。
心地よい温もりにふと陽子が目覚めるとそこは浩瀚の胸の中であった。自分も浩瀚も何も着ていないことに気付きあわてて起き上がろうとすると浩瀚の両腕が陽子を胸元に引き戻した。
「浩瀚っ!」
「もうお目覚めですか」
「な、何でおまえがここに居るんだ?それも、は、裸で!」
「つれないですね。主上が私に抱きついたまま御放し下さらなかったのですよ。お忘れか?」
「し、知らない、知らないっ!」
真っ赤になって陽子は首をぶんぶん振る。
「主上はそれは大変お可愛らしく『いっちゃやだ』などと泣かれて首に抱きつかれた時は私の理性も崩壊致しましたから」
そう言いながら浩瀚は陽子の髪を撫でた。
「そして胸に口づけを落すと主上は『もっと、もっと』とおっしゃり」
陽子は両手で浩瀚の口を塞いだ。
「んもぉ〜〜いいかげんにしろっ!」
「主上、そういう時は」
二人の体勢は入れ替えられ浩瀚は陽子に深く口づけを落とした。
「このように口を塞ぐのですよ」
「こ、浩瀚っ!」
「主上はご存じないのですね。泣いている女性を慰めるのは抱くのが一番だと」
「もう、浩瀚なんて知らないっ!」
浩瀚は再び陽子に快楽を齎した。
2003.12.31 UP
みさおさまんちの555キリでした!!vv
◆みさおさまのお言葉より◆
めれーな様のキリリク「ヘコんだ陽子を慰める浩瀚」ということでしたが
如何なものでございましょう?ヘコむ内容が暗いのでどうしようかと。(笑)
初め閣下が白くて書きずらく最後は黒ということで。
やっぱ書きやすいですね、黒い閣下。
キリ番555踏んでいただいてどうもありがとうございました。
みさおさんちのゾロ目キリリク権ゲーットvv。
何をお願いしようか考えた結果、みさおさんちの浩瀚には、主上を慰めて頂こうかとvv。
私も慰められた心地が致しました、おほほvv。
「海客は妊娠するか否か」って、ちょっと色々考えますよね。
私は、戸籍に入れば十二国の人たちと同じ扱いになるような気がするのですが、
海客同士、浮民として巡り合えば、もしかしたらその可能性も無きにしも非ず…?
(またこんな問題提起/笑)。
原作ではまず触れられることがないでしょうから(少女小説だ^^;)、考えると面白いですよね^^。
みさおさま!!ありがとうございました!!vv