畏怖

 

 

 

 浅い眠りから、醒める。
 豪奢な牀榻の扉を僅かに開けば、淡い紅色の幄越しに、月明かりが射し込む。
 禁色に染められた紗が、ふわ、と揺れた。
 間近の露台からは、微か、潮の香り。
















  一線を、越えてしまった。














 傍らに眠る少女を見遣り、男は思う。
 自分は、海客ではない。胎果ではない。
 里木に生り、卵果から出で、この世界で育った。
 だからどうしても、この世界の概念を払拭することは出来ない。












  側臥する少女は------神なのだと。












 薄暗い閨の中、一条の光に気付いたのか、少女が僅かに身じろぐ。
 無意識に、自分を求める------しなやかな腕。
「…主上?」
「…………」
 少女が、腕の中で、男の名をそっと囁き返す。



 畏れ多いという、気持ち。
 愛しいという、気持ち。












 神を組み敷くという、淫靡な高揚感------。


















  こうなってしまった以上、後戻りは出来ない。
  自分は、この少女に------触れてしまったのだ。
  忘れることなど、出来ない。











  この、背徳的な甘露を------。














 自分は、天帝に試されているのかも知れない。
 やがて、何らかの罰が下るのかも知れない。






 だが。


 例え、雷に討たれようとも。
















 男は再び、神の上に躰を落した。
















 改めて読み返してみたらば、黒いよ、浩瀚…(油汗)。
 私なんかが、つい、自分の世界の物差しで十二国話を書いちゃうのと同じように、浩瀚の深層心理には、私たちには測れない、あちらの物差しがあるのではないかと思って、こんな散文を書いてみました。
 が、これを書いてから、きよた家さまの「defiant attitude」を拝見して、「そう!浩瀚ってこんな割り切り方が出来る人だよ!」と、目からウロコが落ちたのでした(^_^;;)。
 いやね、どうして、自分を罷免した陽子を最後まで信じられたのか、つーのが、MYナゾの一つでして、もしかして、浩瀚にとっては『王=神』という、不動の観念があるのかな?という推測から発生した文なんです、コレ。
 舒栄の乱でも、最後まで偽王軍に付かなかった浩瀚の、根拠と心理。是非小野先生に書いてもらいたいですよね!vv その、具体的な「怜悧」さを、原作で読みたいっ(><)。今、一番読みたい番外編です。短編激希望〜〜(叫)。



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