文章倉庫 » 狂言「伯母ヶ酒」研究
基本情報 分類: 女狂言
登場人物 シテ: 甥 アド: 伯母
あらすじ
酒屋を営む伯母はしわいな人(けち)でありまだ甥に酒を振舞ったことがない。ある日、今度こそ酒にありつこうと甥は伯母の家を訪ねるが、どう頼んでもまんまと断られる。甥はふと名案を思いつき、帰り際にこのあたりには恐ろしい鬼が出るので気を付けるように、と親切ごかしに脅かす。いったん帰る振りをした甥は鬼の面をかぶって引き返し、恐れおののく伯母を尻目に蔵に入り込み存分に酒を飲むが、酔いが回って寝込んだところを伯母に正体を見破られ、ほうほうの体で逃げていく。
面(おもて)について
使用する面は、狂言面「武悪」。鬼の相を表すが、能面「べし見」などとは違いどことなくユーモラスさがある。鬼狂言では能の面と同じく、幕のこちら側で外されることはないが、「伯母ヶ酒」では小道具として使用され、酒を飲むのに一々取り外すのに面倒になった甥は膝にかけて伯母の方に向けたりもする。
狂言での女性の装束
能では女性を演じる場合必ず面をつけるが、狂言では未婚の女性に「乙」を用いることがあるほかは基本的に直面(ひためん・面なし)である(「泣尼」の例外はある)。女性の役柄であることは装束で表される。縫箔という繻子地に金箔の縫い取りをした衣装に女帯をし、頭に美男鬘という白い麻布で被り物をする。本物の縫箔は高価なので染め模様のものを使うことが多い。扇も男役のときは白骨の扇だが、女役は黒骨である。
美男鬘の機能・名称の由来
男の地顔を隠し、小顔にすることで、女性を表す。男を美しい人に見せるためのものだから「美男鬘」という。美女役であれば、なるべく美男鬘で顔が隠れるようにする。
執筆: 2004年度入部 H. K. 2005年度片山定期能7月公演と観世蛍雪会に向けた部内研究冊子から