文章倉庫 » 狂言「酢はじかみ」研究
基本データ 分類 集狂言(大蔵流) 雑狂言(和泉流)
登場人物 シテ 酢売り アド 薑(はじかみ・生姜)売り
あらすじ
津の国の薑(はじかみ・生姜)売りが、都への行商の途中、同じく都へ商売に行く和泉の国の酢売りに出会う。
はじかみ売りは酢売りに向かって自分に挨拶しなければその酢は売らさぬと言い、両者言い争いになる。互いに秀句(駄洒落)を織り交ぜて自分のうる商品がいかにして禁裏御用達となったが由緒話を吹聴し合い、その後都への道すがら秀句を言い合って、勝った方が売り物の司を持とうということになる。これより舞台を一周しながら目に入る風物を、「から」と「す」の言葉で評する秀句遊びの応酬が続く。
結局勝負は付かず、互いの秀句の機知を褒めあい、仲良く二人で商売しようということになって大笑いしながら去って行く。
みどころ
「酢はじかみ」は喜劇仕立ての会話劇狂言である。酢売りとはじかみ売りの秀句の掛け合いは現在の漫才に通じるものがあり、とてもわかり易くおもしろい。
例えば酢売りの由緒話、
「さても、推古天皇の御時、一人の酢売り禁中を売り歩く、帝、これを聞こし召し『あれは如何に』と御じょうある。参候、あれは酢と申していかにも酢き物にて候と申し上げられければ、『さあらば、その酢を召せ』とて召されしに、すい門をするりと通り、すの子縁に出で畏まる。帝、墨絵の襖をスルスルと開けさせ給い、するすると御出あって、その時の御詠歌に『住吉の 隅に雀の巣を組みて さこそ雀の住みよかるらん』と遊ばされ、その後いかにも好き御酒を下されてより此の方、酢は売り物の司じゃほどに某へ一礼なくばそのはじかみは売らすまい。」
また、二人の秀句遊びの掛け合い、
は「唐物店じゃ」 酢「数奇屋道具もある」 は「唐の鏡」 酢「姿見」 掛け物を指して、 酢「墨絵でスッパリと描いた」 は「讃も唐様」 酢「子昂(すごう)も自画自賛が」
と言った風に、「から」と「す」の言葉を駆使して駄洒落的な言葉遊びを展開して行くのである。日本語の響きによる言葉遊び、この要素が後の漫才や落語なんかに継承されていったのかと思うと、とても興味深い。
執筆: 2004年度入部 H. T. 2006年度片山定期能1月公演に向けた部内研究冊子より